銀行は死亡をなぜわかる?口座凍結の解除方法も解説
2025/07/06

本記事では、銀行が顧客の死亡をどのように把握するのか(遺族連絡やお悔やみ欄、公共機関など)から、死亡後の口座凍結タイミングと解除方法(葬儀費用の引き出しや遺産分割協議書、遺言の特例)までを解説。口座凍結で取引が停止する仕組みや相続人の確認方法、共同名義口座のリスク、生前対策も紹介し、安心して手続きを進めるためのポイントをまとめています。
目 次
銀行は顧客の死亡をどのようにして知るのか
死亡届と銀行の連携は原則ない
銀行は戸籍法に基づく死亡届を提出する市区町村と直接データ連携しておらず、役所から預金口座の管理情報として自動的に通知を受け取る仕組みはない。マイナンバー制度下においても個人情報保護の観点から、金融機関へ死亡情報を一斉に共有する仕組みは整備されておらず、原則として顧客自身や遺族の申告がない限り、銀行側から死亡を把握することはできない。
銀行が死亡を把握する主なきっかけ
銀行が顧客の死亡を確認するケースは限られており、以下のような外部情報や内部監視によって発覚することが多い。これらの情報をもとに口座凍結や相続手続きの案内が始まる。
遺族からの連絡
最も一般的なのは、配偶者や子などの遺族が銀行窓口やコールセンターに対して故人の死亡を報告する方法である。報告時には死亡診断書や戸籍謄本などの公的書類を提出し、凍結後の口座解約や残高引き出し、相続手続きに必要な書類案内を受ける。
新聞のお悔やみ欄や訃報
一部の銀行では、地域紙やオンラインのお悔やみ欄、葬儀社の訃報情報サービスを導入し、定期的に顧客名の照合を行っている。訃報欄に故人の氏名が掲載された場合、該当口座を調査対象とし、遺族への連絡や凍結処理を行うことがある。
公共機関からの情報
原則として死亡届情報は共有されないが、市区町村の収納事務(固定資産税・住民税)や日本年金機構の年金支給停止手続きなど、公共料金や給付金の停止調整の過程で自治体や年金機構が銀行に問い合わせを行い、故人の死亡を把握する場合がある。
ATMでの不正利用などによる発覚
故人の口座で通常と異なる大量引き出しや第三者による不正送金が検知された場合、銀行の不正取引監視システムがアラートを発し、担当者が本人確認を試みる。その際に「本人はすでに亡くなっている」という遺族からの指摘や市区町村データとの突合せで死亡が判明し、速やかに口座が凍結されるケースがある。
故人の死亡が銀行に伝わるとどうなるのか
銀行が顧客の死亡を把握すると、まず当該口座を凍結し、不正利用や余計な引き落としを防止します。以後、相続手続きが完了するまで、原則として預金の払い戻しや解約ができなくなります。
口座凍結の目的とタイミング
口座凍結は、①不正引き出しの防止、②相続人間のトラブル防止という2つの目的があります。タイミングとしては、遺族からの死亡通知や市区町村からの戸籍情報、訃報掲載などを銀行が確認した時点で行われます。通知から数日以内に手続き担当部署が口座状態を「停止」に変更します。
口座が凍結されると何ができなくなるのか
凍結後はキャッシュカードや通帳を用いたATM取引、窓口での振込・出金、インターネットバンキングによる送金・残高照会など、ほぼすべての取引が停止します。定期預金の継続や解約、投資信託の解約注文も受け付けられなくなります。ただし、残高は口座に留保されたままとなり、利息は通常どおり計算されます。
凍結された銀行口座からお金を引き出す方法
相続手続きが整うまで原則払い戻しはできませんが、急を要する費用に限り下記のような例外措置が認められる場合があります。
葬儀費用など一部の引き出し
葬儀費用や火葬料などの急迫した支出に対応するため、銀行所定の「死後取扱依頼書」や死亡届の写し、葬儀費用の見積書を提出すると、限度額内で一時的に引き出しが許可されることがあります。銀行ごとに扱いが異なるため、事前に問い合わせが必要です。
遺産分割前の仮払い制度
相続人全員の同意を得た場合、家庭裁判所に「仮払い許可申立書」を提出し、許可決定を受けることで、口座残高から一定額を仮払いとして受け取ることが可能です。仮払いには遺産全体の範囲や各相続人の取得見込額に応じた上限が定められており、手続き後は速やかに遺産分割協議書を作成して正式な相続手続きに進みます。
銀行口座凍結の解除に必要な手続きと流れ
故人の死亡により凍結された口座を解除するためには、相続人の確定から遺産分割協議書や遺言書の提出まで、一連の手続きを正しく進める必要があります。以下では全体像と必要書類を段階的に解説します。
口座凍結解除の全体像と必要書類
口座凍結解除の手続きは、(1)相続人の確定、(2)必要書類の収集、(3)遺産分割協議書もしくは遺言書の提出、(4)銀行による審査、(5)口座凍結解除という流れです。各段階で求められる主な書類は次のとおりです。
- 故人の戸籍謄本(死亡が記載されたもの)
- 相続人全員の戸籍謄本および住民票
- 相続人全員の実印と印鑑証明書
- 遺産分割協議書(または遺言書)
- 相続人全員の銀行所定の払戻依頼書
相続人の確認と必要書類
戸籍謄本など
銀行口座凍結解除には、故人の出生から死亡までの戸籍謄本一式が必要です。これにより法定相続人を法的に確定します。各市区町村役場で取得し、全ての相続人分を用意しましょう。
印鑑証明書
相続人が遺産分割協議書を作成・提出する際には、各自の実印と印鑑証明書が不可欠です。発行後3か月以内のものを用意し、原本で提出してください。
遺産分割協議書の作成と提出
遺産分割協議書とは
遺産分割協議書は、相続人全員で遺産の分割方法を合意し、署名・押印した書面です。銀行はこれを根拠に口座凍結解除の可否を判断します。
遺産分割協議書に記載する内容
遺産分割協議書には、以下の項目を明確に記載します。 ・被相続人の氏名、死亡日 ・相続人全員の氏名・続柄・住所 ・各相続人が取得する財産の内容(銀行口座の場合は支店名、口座番号、預金残高) ・相続人全員の署名押印
遺言書がある場合の口座凍結解除
遺言書による手続きの特例
故人が自筆証書遺言や公正証書遺言を残している場合、遺言書の内容に基づいて銀行は口座を解除します。自筆証書遺言は家庭裁判所の検認済証明書、公正証書遺言は原本を提出する必要があります。
遺言執行者の役割
遺言書に遺言執行者が指定されている場合、その者が銀行に対し口座解約・払戻しの申し出を行います。遺言執行者は印鑑証明書や身分証明書をそろえ、銀行所定の手続きに従って書類を提出します。
銀行口座の相続手続きに関する注意点
相続放棄を検討している場合
被相続人の財産よりも借入金や未払金が多い場合、相続放棄を選択すると負債を負わずに済みます。ただし、家庭裁判所に対して「相続放棄申述書」を提出する必要があり、被相続人の死亡を知った日から3か月以内という期限に注意してください。この期限を過ぎると単純承認とみなされ、放棄が認められなくなるため、早めに債権・債務の調査を行い、必要書類(被相続人の死亡届受理証明書や戸籍謄本など)を揃えて手続きを進めましょう。
生前にできる対策
家族信託や任意代理契約
家族信託は、被相続人(委託者)が財産を信頼する家族(受託者)に託し、死亡後の財産管理や分配方法をあらかじめ定める仕組みです。公正証書によって信託契約を締結するため、遺言よりも柔軟かつ確実に財産の承継ルールを設定できます。また、銀行口座については任意代理契約(委任状)を活用し、生前に預金管理の権限を委任しておくことで、委託者が不在時でも家族が口座振替や資金移動を行える利点があります。
共同名義口座のリスク
夫婦や親子で共同名義にした口座は便利ですが、一方が死亡すると残る名義人が単独で全額を引き出せるという誤解があります。実際には被相続人分の取り扱いが不透明になりやすく、相続人間での争いの種ともなります。共同名義口座を利用する場合は、いつ誰がいくら使ったかを記録し、相続発生後には個別の相続手続きで正確な遺産分割を行えるようにしておきましょう。
相続税の申告について
相続税の申告・納付は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内に行わなければなりません。遺産の合計が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合、税務署への申告が必要です。銀行口座の残高証明書や不動産の評価証明、生命保険金の支払通知書などを早めに入手・整理し、税理士など専門家に相談しながら申告書を作成しましょう。期限を過ぎると延滞税や加算税が課されるため、スケジュール管理を徹底することが大切です。
まとめ
銀行は故人の死亡を遺族からの連絡や訃報、公共機関の情報などで把握し、法定相続人確定後に口座を凍結します。凍結中は振込・引き出しが停止されるため、葬儀費用や仮払いは専門的手続きを要します。解除には戸籍謄本、印鑑証明、遺産分割協議書、遺言書などを揃え、相続人の同意を得ることがポイントです。相続放棄や生前対策も事前に検討し、相続税申告が必要な場合は期限に注意し、税理士など専門家への相談も有効です。
記事監修者
小野税理士事務所代表の小野 聰司。
平成21年の12月に小野税理士事務所を開設し、多くのお客様のサポートをしている。
