家庭裁判所から受理されず相続放棄ができない場合のケースを紹介

2023/01/10

相続が発生したときに、遺産の中に相続したくない借金や負債、管理したくない不動産がある場合があります。

その場合、それらを相続しないために、相続放棄を考え家庭裁判所に手続きしに行かれるかと思います。しかしケースによっては、相続放棄を認められない場合があるのはご存じでしょうか。

今回、その相続放棄ができないケースについて紹介します。

相続放棄とは

相続が発生した場合、相続人は単純承認と限定承認、相続放棄の3つの相続方法を選ぶことができます。
単純承認は、すべての財産を相続する方法です。

限定承認は、相続で得た財産から故人の借金などの負債を清算して、財産が残っていればそれを相続します。相続放棄の場合は相続権を全て放棄するため、財産は相続できません。

相続放棄を行うケース例としては、故人が借金などの負債を持っていたケースや、故人が所有していた不動産に収益が望めないなどの理由で相続したくないケース。相続人間のトラブルに巻き込まれたくないケースなどがあります。

相続方法は、個人で選択することができます。そのため他の相続人が単純承認を選択して、1人だけ相続放棄を選択するということができます。

また、相続の承認と放棄に関しては、基本的には撤回することはできません。そのため、相続する方法を選ぶ際には、慎重に選択してください。

相続放棄の手続きについて

相続放棄は、故人の最後の住所地の家庭裁判所で申し立てをすることで行うことができます。
その場合、以下の4種類の書類の提出が求められます。

・相続放棄申述書
・相続放棄をする方の戸籍謄本
・亡くなった方の戸籍謄本
・亡くなった方の戸籍の附票または住民票除票

その他にも、家庭裁判所から審理するために、追加で書類の提出を求められる場合があります。

相続放棄が認められない4つのケース

家庭裁判所で相続放棄の申し立てをしても、相続放棄が認められないケースが4つあります。

①単独承認とみなされて、すでに相続しているケース

相続人の意思に関係なく、故人の持つ口座や財産、債権などに対して下記のようなことをしますと、遺産を相続したとみなされ相続放棄が認められなくなります。

ですので、相続放棄を考えている場合には、遺産には手をつけないことをおすすめします。

【故人の口座に対して】

・払い戻した後に、自分の口座に入金した
・口座を解約した

【故人の持つ不動産物件に対して】

・賃料を利用者に請求した、賃料の振込先を自分の口座に変更した

【故人の負債に対して】

・故人の負債を相続する財産から弁済した

【故人の財産、資産に対して】

・隠して自身のものした
・使い込んだり、廃棄したり、他の人に譲渡をしたりした
・遺産に担保権を設定した
・形見分けで自宅にあったものを相続人で分け合って受け取った
・家の改築やリフォームなど改修を行った
・不動産や車、携帯電話などの名義変更をした
・電話や光熱費などの故人宛ての請求書を支払った

【故人の保険に対して】

・生命保険の受取人が故人だったが、それを使用してしまった
・積立型生命保険の解約返戻金を使用してしまった

【その他】

・故人の株式の議決権を行使した
・遺産分割協議へ参加して、遺産分割協議書に印鑑を押した

②相続放棄が本意ではなかったケース

次のように騙されたり、脅されたりして相続放棄を望んでいなかったのに、申し立てすることになった場合は、相続放棄が認められません。

・偽の相続放棄申述書を作成され勝手に手続きされた
・相続人の立場になった親が裁判所の許可を得ずに自分の子供にだけ相続放棄をさせた
・故人に借金があると騙されて相続放棄の申立てをした
・相続放棄をするように脅されて相続放棄をした

③申述の期限が過ぎてしまったケース

相続放棄には、熟慮期間が設けられています。熟慮期間は、故人が亡くなったことを知った時点か、自分が相続人であることを知った時点から3か月です。

この間に相続人は、相続放棄をするかしないかを決めることができます。そして熟慮期間が過ぎてしまった場合には、原則それ以後に相続放棄をすることができません。

そのため自分が相続人だと分かった場合には、できるだけ早めに故人の財産状況の調査を行い、相続放棄するかの判断材料を集めることをおすすめします。

④必要な書類が提出できなかったケース

家庭裁判所に提出する書類が揃っていなかったり、不備があった場合には申立てが受理されませんので、相続放棄は認められません。

また、書類不備などの理由で受理されず、その対応が遅れて熟慮期間が過ぎた場合、単純承認が成立してしまい、相続放棄ができなくなる場合があります。

ですので相続放棄をする場合には、余裕を持って書類を準備して提出を行い、もしも不備があった場合には速やかに対処しましょう。

早めに相続放棄するか判断が重要

相続放棄することで、相続による不利益を回避することができますが、気をつけないと相続放棄が認められない場合があります。

そのため、早い段階から故人の財産状況の調査を行い、相続放棄をするか判断しましょう。判断に迷う場合、専門家を頼るのも手です。

相続放棄すると決めた場合には、故人の遺産に手をつけないよう気をつけ、熟慮期間内に家庭裁判所に申し立てを行ってください。

小野 聰司

記事監修者

小野税理士事務所代表の小野 聰司。
平成21年の12月に小野税理士事務所を開設し、多くのお客様のサポートをしている。