デジタル遺品整理とは? 整理方法や注意点、業者の費用相場について紹介
2023/03/10
近年の遺品整理で問題になっていることのひとつが「デジタル遺品」の処分です。デジタル遺品とは、スマートフォンやパソコンなどのデジタル機器や、インターネット上に保存されている情報などのことを指します。
重要な個人情報が詰まったデジタル遺品は、適当に処分してしまうと悪用やトラブルに繋がる可能性があるため、取り扱いには十分注意が必要です。
この記事では、デジタル遺品についての基本知識や、デジタル遺品を整理する際の注意点についてご紹介していきます。
目 次
デジタル遺品とは?
デジタル遺品とは、スマートフォンやパソコンなどのデジタル機器内や、インターネット上に保存されている故人の情報、SNS、プロバイダ、会員サイトの契約などのことを指します。
主なデジタル遺品について
ここでは、整理しておきたい主な「デジタル遺品」をカテゴリーごとにご紹介していきます。
スマホ・パソコンなどのデジタル機器
スマートフォンやパソコンなど、多くの個人情報が残されている「デジタル機器本体」もデジタル遺品にあたります。処分の際には悪用を避けるため、初期化するなどして内部のデータをしっかりと消去する必要があります。
主なデジタル機器の種類は下記の通りです。
・スマートフォン(携帯電話)
・パソコン
・外付けハードディスク(USBなど)
・デジタルカメラ
SNS・クラウドサービスなどのインターネット上の情報
整理が必要なネット上の情報には、次のようなものがあります。
・SNS(LINE、Twitter、Instagram、Facebookなど)
・クラウドストレージ(GoogleDrive、iCloud、Dropbox、Evernoteなど)
・個人のホームページ、ブログ、noteなど
・月額サービス(動画・音楽サイト、電子書籍・電子新聞など)
放置しても問題がない場合もありますが、個人情報などが悪用される可能性もあるため、内容によっては削除をするなどの対応が必要です。データを残しておきたい場合は、自分のパソコンなどにダウンロードしておくと良いでしょう。
また、InstagramやFacebookには、登録者が亡くなったことを通知すると「追悼アカウント」となり、アクセスできなくなる機能があります。
ネットバンク・ネット証券・仮想通貨・FX口座の情報
ネットバンクやネット証券、仮想通貨、FXの口座についても、きちんと把握し整理しておきましょう。主な口座は下記の通りです。
・インターネット銀行(楽天銀行、ジャパンネット銀行など)
・ネット証券口座(SBI証券、マネックス証券など)
・仮想通貨口座(ビットコイン、コインチェックなど)
・FX口座(DMM、GMOクリック証券など)
デジタル遺品整理の必要性について
重要な個人情報が詰まったデジタル遺品を誤った方法で処分したり、整理をせずに放置した場合、さまざまなリスクが考えられます。ここでは、起こりうるトラブルやデジタル遺品の必要性についてご説明していきます。
個人情報の流出、悪用、アカウントの乗っ取り
スマートフォンやパソコンなどのデジタル機器の中には、連絡先やSNSの情報などを始め、重要な個人情報が多く詰まっています。内部データを残したまま処分した場合、悪意を持った人に解析されてしまうと、個人情報の流出や悪用などのトラブルに繋がります。
また、インターネット上に残されたSNS、プロバイダ、ネットショップ、会員サイトの契約、口座などの情報に関しても、放置しておくと「アカウントの乗っ取り」などの被害を受ける危険性があります。
アカウントの乗っ取りは、不正利用などの金銭的な被害だけでなく、プライベート情報の流出など、さまざまなトラブルに発展する可能性が考えられます。
遺産の相続もれが起こる
故人がネット口座を所有していた場合、遺族が気付かずに相続漏れが起こる可能性があります。相続に漏れた預貯金口座は、10年で請求ができなくなります。また、株取引やFXを行っている場合、放置していると気付かないうちに損失が発生しているケースもあるため注意が必要です。
サブスクなどの月額費用が支払われ続ける
サブスクなどの月額サービスに加入している場合、遺族が気づかず解約を行わずにいると、サービス料が発生し続けてしまう可能性があります。
現在、月額費用が発生するサービスは、音楽や動画サイト、iCloudやEvernoteなどのクラウドストレージ、電子書籍や電子新聞を始め、実に多岐に渡ります。見知らぬ請求や引き落としがないか、請求明細をしっかりとチェックしておきましょう。
デジタル遺品の整理は誰が行う?
デジタル遺品の整理は、遺族などの相続人が自分たちで行う方法と、専門の業者に頼む方法があります。デジタル遺品の中にはアクセスができなかったり、本人に代わって第三者がアクセスを行うと「不正アクセス禁止法」に触れてしまう可能性があるなど、処理が難しいものもあります。
処理が難しいデジタル遺品は、専門の業者に依頼したり、弁護士や司法書士に相談するなどして、適切に整理していきましょう。
後の項目では、自分でデジタル遺品を整理する場合、専門の業者に依頼する場合、それぞれの進め方や費用相場についてご紹介していきます。
自分でデジタル遺品整理を行う方法
ここでは、遺族や相続人が「自分で」デジタル遺品整理を行う際の、主な流れについてご紹介していきます。
デジタル機器、デジタル遺品に関する情報を集める
まずは、スマートフォンやパソコンなど、デジタル遺品に該当する機器本体や、IDやパスワードなどのデジタル遺品に関する情報を集め、整理することから始めましょう。
IDやパスワードは、故人が残した手帳やノートの他に、スマートフォンやパソコン内の「メモ帳」に保存されている場合もあるため、確認してみましょう。
スマートフォンのロックについては、キャリアショップやメーカーに持参しても解除してもらうことはできません。契約の解除は可能ですが、中のデータに触れることはできないため、ロックが解除できない場合は、専門の業者に依頼する必要があります。
その他、ネット口座の情報が記載された書類なども、事前にまとめておくとスムーズです。
データを削除していく
インターネット上に残っている情報が確認できたら、データを消去していきます。残しておきたいデータは、事前に自分のパソコンなどにダウンロードしておきましょう。
ただし、前述の通りデジタル遺品の中には、本人に代わって第三者がアクセスを行うと「不正アクセス禁止法」に触れてしまう可能性があるなど、処理が難しいものもあります。
その他、どうしてもログインできない重要なデータがある場合は、専門の業者に相談してみましょう。また、故人のSNSをどうしたら良いのか迷う場合は、直接SNS会社に問い合わせてみると良いでしょう。
デジタル機器本体を処分する際は必ず「初期化」を行い、データが第三者に復元されない状態であることを確かめてから、売却や廃棄をするようにしましょう。
ネット口座を保有している場合は「相続手続き」を行う
故人がネットバンク・ネット証券・仮想通貨・FXなどの口座を所有していた場合は「相続手続き」を行う必要があります。
所有者が亡くなった場合、口座は凍結され所定の手続きが必要です。問い合わせ窓口がわからない場合は「銀行名 相続」などのワードで検索をかけると良いでしょう。またFXや仮想通貨は、状況によっては負債を抱えてしまうこともあるため、迅速に対応することをおすすめします。
専門の業者にデジタル遺品整理を依頼する方法と費用相場
スマートフォンやパソコンのロックが解けない場合や、デジタル遺品の適切な処分方法がわからない場合は、専門の遺品整理業者に相談してみましょう。
遺品整理業者は遺品の回収や買取を始め、供養までを代行してくれる業者です。まずは依頼したい内容をまとめ、複数の業者に見積もりを取ってみると良いでしょう。
デジタル遺品整理の費用は、内容や業者によってもさまざまですが、相場目安は下記の通りです。
(a)スマホやパソコンへのログイン、データなどの取り出し:1〜5万円
(b)上記の(a)に加えてIDやパスワードのリスト作成、契約退会の手続きを行う場合:5〜10万円
できるだけ価格を抑えたい場合は、自分でできる作業は自分で行い、部分的に業者に依頼すると良いでしょう。遺品整理業者の中には、法外な価格を提示してくるなど、悪徳な業者も存在します。
必ず2〜3社の相見積もりを行い、見積書の内容をしっかり確かめて信頼できる業者を見極めましょう。
デジタル遺品整理について、覚えておきたいポイント
最後に、万が一の際に自身の遺族が「デジタル遺品整理」について困らないよう、注意したいことや、覚えておきたいポイントをご紹介していきます。
デジタル遺品整理について生前にできること
自身が亡くなったあと、遺族がデジタル遺品整理について困ったり、トラブルを抱えたりしないよう、生前にできることがあります。
まずは所有しているデジタル機器の種類や、契約しているサービスなどの情報、解約に必要なIDやパスワードなどをまとめておきましょう。その際、使用していないサービスなどがあれば解除し、整理しておくと良いでしょう。
さらに、万が一の際それらをどのように処分、整理して欲しいか、事前に伝えておくかエンディングノートに残すなどしておくと安心です。
エンディングノートや遺言状などに、デジタル遺品を任せる旨を記し残しておくと、残された家族が「不正アクセス禁止法」に抵触してしまう危険性も防ぐことができます。
デジタル遺品についてまとめた情報は、金庫にしまう、専門の業者や信頼できる人に託すなど、安全な方法で管理しておきましょう。
家族や第三者に見られたくないデータの扱いについて
残された家族や第三者に見られたくないデータについては、自分しか知り得ない鍵フォルダに保管するなどして対策しておきましょう。また、GoogleDriveやGmailなどは、一定期間アクセスがないと削除される機能を利用することもできます。
不正アクセス禁止法に抵触する危険性を防ぐ方法
本人以外の第三者がSNSなどの情報に触れると「不正アクセス禁止法」に抵触してしまう危険性があります。とは言え、遺族が故人のアカウントを整理することについては、判断が難しいケースが多いようです。
不安がある場合は、弁護士や司法書士に確認してみましょう。前述の通り、できれば事前にデジタル遺品を任せる意志を残しておくと安心です。
まとめ
この記事では、デジタル遺品の整理についてご紹介してきました。スマートフォンやパソコン、インターネット上に残るデジタル遺品の中には、重要な個人情報が詰まっているため、取り扱いには十分注意が必要です。
情報漏洩、悪用などのトラブルを防ぐためにも、迅速に適切に整理を行いましょう。デジタル遺品の整理に困った際は、専門業者への依頼も視野に入れ、慎重に対応していくことが大切です。

記事監修者
小野税理士事務所代表の小野 聰司。
平成21年の12月に小野税理士事務所を開設し、多くのお客様のサポートをしている。