兄弟・姉妹は身元保証人になれる?兄弟・姉妹の身元保証人になる場合の注意点
2022/07/20
「身元保証人」は、入院や施設入所の際など、さまざまな場面で求められることがあります。少子高齢化が進む近年では「いざという時に身元保証人を頼む人がいなくて困っている」または「兄弟・姉妹の保証人を頼まれたけど、自身も高齢のため病院から断られた」というお年寄りの方も増えています。
特に第一次ベビーブームに誕生した、いわゆる「団塊の世代」の方は、同年代の兄弟・姉妹をお持ちの方も多いかと思います。この記事では、身元保証人になるための条件を初め、兄弟・姉妹の身元保証人になる際の注意点、身元保証人を頼む人がいない場合の対応策などについてご紹介していきます。
目 次
身元保証人とは? 必要となる場面とは?
身元保証人が必要とされる場面は、雇用契約時、病院への入院時、介護施設への入居時などです。身元保証人に求められる役割は、いざという時の「損害担保」となりますが、病院や施設によってもその範囲は異なります。一般的には、緊急時の対応、入院(入所)・治療費が払えなくなった場合の支払い、亡くなった時の身元引き受け人としての役割などが求められます。
また、「身元保証人」と似た言葉に「連帯保証人」がありますが、両者の違いはその責任の範囲にあります。連帯保証人は、民法446条により「被保証人が発生させた損害を、すべて賠償しなければならない」と定められています。
一方の身元保証人は、被保証人が発生させた損害について100%責任を負う必要はなく、その範囲や期限は限定的なものとなります。
兄弟・姉妹の身元保証人にはなれる?
結論から言えば、兄弟・姉妹であれば、誰でも身元保証人になれるというわけではありません。身元保証人は、配偶者、子、親、兄弟・姉妹などの身近な家族、親族に依頼するのが一般的ですが、身元保証人に求められる条件は、病院や施設によっても異なります。
例えば、身元保証人に入院・治療費などの支払い義務を求める場合は「支払い能力を有する成年者であること」や、生計を別にしている「別居家族」を条件としているケースも多くあります。一方で、支払い義務については別の「連帯保証人」を立てる場合は、身元保証人には経済力は求めないケースもあります。
いずれの場合も、身元保証人には「緊急時に本人に代わってきちんと対応できること」が必要とされます。そのため、近しい関係である兄弟・姉妹であっても、高齢である、収入が不安定である、居住地が遠であるなどの理由で、身元保証人として認められないケースがあります。
兄弟・姉妹の身元保証人になる際の注意点
特に、兄弟姉妹などの近しい関係の場合「書類に名前を書くだけだから」と軽い気持ちで身元保証人を依頼したり、引き受けたりすることも珍しくありません。しかし、身元保証人に求められる役割は多岐にわたり、場合によっては重い責任が課せられます。
同じ時代を過ごしてきた兄弟姉妹はかけがえのない存在ですが、高齢期はお互いに自身の生活で精一杯になりがちです。いざという時に、お互いに過度な負担や心配をかけることのないように、身元保証人に求められる役割や責任についてしっかりと理解しておきましょう。
身元保証人に求められる主な役割について
ここでは、病院や高齢者施設に入院・入所する際に求められる、身元保証人の主な役割についてご紹介していきます。ただし、身元保証人に求められる役割や責任の範囲は、病院や施設によっても変わってきます。依頼する側も引き受ける側も、提示された誓約書の内容を事前にしっかりと確認しておきましょう。
入院・入所に必要な準備・身の回りのサポートを行う
本人が入院や入所に必要な準備を行うのが難しい場合は、代わりに身元保証人が行うことがあります。具体的には、必要書類や日用品の用意などが挙げられます。その他、必要に応じて身の回りのサポートを行います。
医療・介護方針についての判断
身元保証人は、治療説明や病状説明を本人と一緒に受けることもあります。第三者に同席してもらうことで、患者本人の不安を軽減し治療への理解を深める狙いもあります。また特に、本人の判断力が十分でない場合や、意思疎通が困難な場合は、身元保証人が代わりに医療方針・介護方針についての相談を受け、判断を求められることがあります。
本人が入院(入所)費・治療費を払えなかった時の支払い
被保証人が入院(入所)費・治療費を支払えなくなった場合、身元保証人に支払いの義務が発生するケースがあります。身元保証人を引き受ける際は、支払い義務についての記載の有無を、事前に確認しておきましょう。
亡くなった際の身柄の引き受け・葬儀の手配・逝去後の事務手続き
被保証人が亡くなった際、保証人は身柄を引き取る役割もあります。また、場合によっては葬儀の手配、逝去後の各種手続きなども担います。
身元保証人を依頼できる人がいない場合はどうする?
身元保証人を依頼できる人がいない、身近に頼れる人がいないという場合、まずは「地域包括支援センター」に相談してみると良いでしょう。地域包括支援センターは、住民のために医療や福祉に関するサポートを担っている公共の機関です。お住まいの市区町村のホームページなどから問い合わせが可能です。
その他には、民間の業者が提供する「身元保証サービス」を利用するという方法もあります。入院・施設入所時の身元保証をはじめ、逝去後の身元の引き受け、逝去後の各種手続きまでトータルでサポートしてくれる業者もあります。ただし、サービス内容や利用料金は業者によってさまざまです。
中には法外な料金を請求する悪徳な業者も存在するので、提供されるサービスの範囲や追加料金の有無について、事前によく確認した上で慎重に検討しましょう。
まとめ
身元保証人には、さまざまな役割や責任が生じます。たとえ兄弟・姉妹という近しい間柄であっても、軽い気持ちで依頼したり引き受けたりするのは望ましくありません。いざという時に、お互いに過度な負担をかけることなく安心して生活を送れるよう、身元保証人に求められる役割や責任の範囲について、事前にしっかりと確認しておくことが大切です。

記事監修者
小野税理士事務所代表の小野 聰司。
平成21年の12月に小野税理士事務所を開設し、多くのお客様のサポートをしている。