実家の「生前整理」を効率良く進めるためのポイントや注意点について紹介

2023/03/28

両親が元気なうちに、実家の「生前整理」を進めたいけれど、何から始めたら良いのかわからない。とお困りの方も多いのではないでしょうか。長年溜め込んだ家具や身の回りのものを整理するためには、大変な労力が必要です。

また、親や祖父母の世代の方は、物を大事にするあまり「もったいない」と、捨てることに抵抗がある方も少なくありません。ただし、将来のことを考えると、実家の片付けを始めるのは早いに越したことはありません。

豊かで快適な老後を過ごすためにも、できることから少しずつ実家の「生前整理」を始めてみてはいかがでしょうか。この記事では、実家の片付けのポイントや「生前整理」の進め方についてご紹介していきます。

生前整理とは?

生前整理とは、生きているうちに自身の持ち物や財産などを整理し、死後の準備を整えることを差します。死後の準備と聞くと、ネガティブなイメージを持たれる方もいるかもしれませんが、生前整理とは決してネガティブな行為ではありません。

身の回りをきちんと整えることで、これまでの人生を見つめ直し、自分にとって本当に必要なものを見極めることで、今後の人生としっかり向き合うことにも繋がります。

一言で「生前整理」と言っても、そのやるべきことは多岐に渡ります。以下では、実家の片付けという側面を中心にそのメリットやポイントをご紹介していきます。

実家の「生前整理」を行うメリット

実家の「生前整理」を進めたいと少しでも思っているなら、早いに越したことはありません。幼い頃から長年溜め込んだ家具や身の回りのものが、家の中にたくさん溢れているというご家庭は少なくありません。

それらをきちんと把握し整理するためには、多くの労力が必要です。また年齢を重ねれば重ねるほど、大変な作業になってしまうため、親が健在の間にできることから進めていくことをおすすめします。

ここでは、実家の「生前整理」を行う具体的なメリットについてご紹介していきます。親が実家の片付けを躊躇っている、という場合には、ぜひ下記でご紹介するさまざまな「メリット」を伝えてみてくださいね。

万が一の際に「どこに何があるか」をすぐに把握できる

今はどんなに元気でも、急に倒れてしまったり、入院をせざるを得ない病気を患う可能性は誰しもあります。そんな万が一の際に「どこに何があるか」を把握できなければ、必要なものを探すだけで大変な手間と労力がかかってしまいます。

不要なものを整理し、できる限りすっきり暮らすことで、万が一の際にもスムーズに対応することができます。また、今すぐに処分できないものも、亡くなったあとの譲り先などを考えておくこともできます。

家の財産を把握しておくことができる

生前整理をしておくことで、身の回りのものや家具だけでなく、家の「財産」を把握することにも繋がります。特に不動産や宝飾品などの財産は、本人以外にその価値を判断するのが難しい場合も考えられます。

正確な判断が難しくなってしまう前に、家の財産を把握し相続先を決めておくことで、いざという時に自身の意向を尊重することができます。また、家の財産を明確にし家族や相続人と事前に共有しておくことで、相続トラブルを防ぐことにも繋がります。

家の安全性が向上する

ものや家具が階段や生活動線に溢れ、十分な足場を確保できていない場合は、転倒など思わぬ事故に繋がる可能性が高くなります。また、ものや家具が多いと地震などの災害が起こった際に、家具の転倒などのリスクが上がります。

できるだけ不要なものを処分し、すっきりとした空間で暮らすことで、室内での不慮の事故を防ぎ安全性の向上に繋げることができます。

在宅介護・バリアフリー工事の施工がスムーズ

万が一、在宅介護が必要になれば、家族やヘルパーさんのサポートを受けることになります。家にものが溢れていると、介護が困難になってしまう可能性があります。

家の中がきちんと整理され、必要なものがすぐに把握できる状態であれば、介護者の負担を減らすことができ、自身の快適な生活にも繋がります。

また歳を重ねて足腰が弱ってくると、スロープや手すりを取り付けるなどの「バリアフリー工事」が必要になる可能性もあります。不要な家具やものを事前に整理しておけば、いざという時に慌てることなく、バリアフリー工事もスムーズに施工することができます。

実家の「生前整理」を効率良く進めるためのポイント

親の了承を得ることができたら、実際に片付けに取りかかりましょう。ただ、自分のものだけでなく、家族みんなのものが詰まった家全体の片付けとなると、どこから始めたらいいのか迷ってしまう方も多いかと思います。

以下では実家の生前整理を効率良く進めるためのポイントをご紹介していきます。

家族全員に生前整理を始めることを共有しておく

実家の生前整理を行う際には、実家に関わる家族全員に、事前にその旨を共有しておくことをおすすめします。自分にとっては不要なものでも、他の家族にとっては大事なものである可能性もあります。

また、実家の中から思わぬ財産が見つかる場合もあります。相続の揉め事や後のトラブルを防ぐためにも、できるだけ随時情報共有をしておきましょう。また、協力してくれる家族がいる場合は、手分けして整理を進めると良いでしょう。

捨てるもの・残すものの基準を共有しておく

家族に生前整理を始めることを共有する際に、あらかじめ「捨てるもの」と「残すもの」の基準や価値観を共有しておくとスムーズです。例えば、〇〇円以上で売れそうなものはフリマサイトなどに出品する、まだ使えるものは寄付するなど、大まかなルールや基準を作っておくと良いでしょう。

片付けやすいところから、1部屋ずつ片付けていく

家全体を一気に片付けようと思うと、途方もない作業のように思えてしまうかもしれませんが、まずは片付けやすいところから1部屋ずつ、または部分的に片付けていくと良いでしょう。

例えば「玄関」「洗面所」というような、比較的範囲が狭く、ものが少ない箇所から手をつけていくとスムーズです。どこか1箇所でも集中して片付けを行った方が、変化が目に見えやすく、片付けのモチベーションを保つことができるのでおすすめです。

捨てやすい物から捨てていく

片付ける箇所や部屋が決まったら、不要なものを処分していきましょう。写真や手紙など、お金で買えない思い出のものを捨てるのは、難しいと感じる人も多いかと思います。

いきなりそれらのものから整理していくにはハードルが高く、いつまで経っても片付けが進まない原因になります。片付けの途中でアルバムを開いてしまい、何時間も経過してしまった、なんていう経験は誰にでもあるのではないでしょうか。

捨てにくいものはいったん保留にして、まずは、壊れて使えないもの、長年着ていない服、読み返すことのない本や雑誌など、捨てやすいものから捨てていきましょう。

ものを捨てることに慣れていない人は、少しずつ「捨てる習慣」をつけていくことがポイントです。また、状態の良い服や本は、まとめて売却する、寄付するなどの選択肢もあります。

アルバム・手紙・賞状などの思い出の品を整理する

身の回りのものをおおかた整理できたら、最後にアルバム・手紙・賞状などの「思い出の品」を整理していきます。捨てにくいものではありますが、すべてを残しておく必要はありません。

思い出を大事にするあまり、現在の生活を窮屈にしてしまっては元も子もありません。将来見返したいかどうかを基準にして、残すか捨てるかを判断すると良いでしょう。

家族だけで実家の「生前整理」が難しい場合は業者への依頼も検討しましょう

ものや家具が多すぎる。協力できる家族がいない。忙しくて片付けの時間をとることができない。などの理由で、自分たちだけで実家の片付けを行うのが困難な場合は、専門の業者に依頼するという選択肢もあります。

業者は片付けや清掃のプロなので、料金はかかりますが、より効率的に短期間で生前整理を行うことができるというメリットがあります。以下では、実家の片づけを業者へ依頼した方が良いケースや注意したいポイント、業者に依頼する場合の価格相場についてご紹介していきます。

実家の「生前整理」を業者に依頼した方が良いケース

家族の全員が物理的に片付けを行うのが難しいケース、足の踏み場がない、いわゆる「ゴミ屋敷」と呼ばれるような状態になってしまっているケースなど、自分たちで手をつけるのが難しい場合は、プロの手を借りることを検討しましょう。

また、大型の家具、家電の処分や移動は、自分たちで無理に行うと怪我の恐れがあるので、部分的にでも業者に依頼することをおすすめします。

実家の「生前整理」を業者に依頼する場合も費用相場

実家の「生前整理」を業者に依頼する場合の費用は、部屋の数や間取り、家具やものの量、階段の上がり下がりがあるかどうかなど、さまざまな条件によっても異なります。

大まかな相場は、2LDK〜3LDK程度の間取りの場合は40万〜60万ほど、それ以下の場合は30万程度を見積もっておくと良いでしょう。ただし、大型の家具、家電の処分が加わると、さらに費用も高くなるケースがあります。

実家の「生前整理」費用を安く抑えるためのポイント

業者に「生前整理」を依頼したいけれど、予算があまり取れないという場合に、費用をできるだけ安く抑えるためのポイントをご紹介します。まず、自分たちでできそうな作業は自分たちで行い、どうしても難しい作業のみを「部分的に」依頼するという方法があります。

例えば大型の家具、家電の移動や処分や移動のみに絞って依頼する、リビングなどの大部屋だけに絞って依頼する、という選択肢もあります。また、実際に業者を選ぶ時は複数の会社に見積もり依頼を出し「相見積もり」を取り、比較検討すると良いでしょう。

いくつかの業者を比べて実際の相場感を知ることで、適切な価格の業者を見極めましょう。

実家の「生前整理」を依頼する際に悪徳業者を見極める方法

生前整理を請け負う業者の中には、法外な料金を請求してくるなど、悪徳な業者も存在します。事前にしっかりと信頼できる業者を見極めることが重要です。前述の通り、まず数社から見積もりを取り、その内容を比較検討してみましょう。

見積書は、金額だけでなく記載されている作業内容もチェックします。具体的かつ項目ごとにきちんと料金が分かれているか確認してみましょう。一式でまとめて記載され、何にどれだけの費用がかかっているのか不明瞭な見積書は注意が必要です。

また、記載されている作業項目が少なすぎる場合も注意しましょう。あとで予定外の追加料金などが請求される可能性があるためです。追加料金の有無は事前にしっかりと確認しておきましょう。

実家の「生前整理」を業者に依頼する際は必ず立ち会いを行う

実家の生前整理を業者に依頼する場合は、必ず立ち会いのもと進めるようにしましょう。すべてを任せきりにしてしまうと、万が一悪徳業者の場合、貴重品を気付かないうちに持ち去られてしまったりするリスクが考えられます。

また、意図的ではないにしても、処分してほしくないものを処分されてしまうなどのトラブルも考えられます。作業中に疑問に思うことがあれば、その場でしっかり確認しましょう。

実家の「遺品整理」を行う際は借金や負債の有無を事前に調べましょう

親が亡くなったあとに「遺品整理」を行う場合は、借金などの負債がないかしっかり確認してから始めましょう。

借金などの負債は、相続開始から3ヶ月以内「相続放棄」を行うことで引き継がないで済みます。逆にその期間を過ぎてしまうと、借金を含む財産を相続することになってしまうので、事前にしっかりと確認しておきましょう。

まとめ

年齢を重ねれば重ねるほど、どうしても体力や判断能力が落ち、家の片付けは億劫になってしまいます。実家の生前整理を行うことで、どんなメリットがあるかを家族間でしっかり共有し、できることから少しずつ進めてみてはいかがでしょうか。

また、親が住んでいる実家の物件を引き継ぐ人がいない場合は、万が一の際に物件自体をどうするのかを相談しておくと安心です。

小野 聰司

記事監修者

小野税理士事務所代表の小野 聰司。
平成21年の12月に小野税理士事務所を開設し、多くのお客様のサポートをしている。