生前整理への行政の考え方と自治体の対応
2023/05/31
高齢化社会が進み、これまでなかったような要望が出てきています。その一つが、生前整理です。生前整理は、存命中に身の回りの品を整理したり、自分の財産を相続人などに引き継ぐといった行為を指します。
整理を考え始めた時には、すでに本人の気力・体力が衰えていることも考えられますが、そんな時に頼りにしたいのが行政や地元の自治体です。生前整理に対して行政はどういうスタンスなのかに加え、自治体の対応例を見てみます。
目 次
行政のスタンス
生存している人への支援が、行政の基本的な考えです。例えば、昨今、社会的な問題として取り上げられることが多い「遺品整理」についてみてみましょう。
個人に身寄りがない、相続人が遺品整理するための費用を出せないといった場合に、支援を期待する向きもありますが、多くの行政は支援していないようです。納税者が収めた税金を亡くなった人のために用いるのはお門違いというのが、行政のスタンスになります。
自治体の対応
遺品整理は亡くなった人への対応ですが、生前整理は生きている人が必要としているサービスと考えることができます。そのため、自治体
は、条件付きで生前整理について支援を行っている場合もあります。ただし、あくまで自治体ごとでの判断となるため、どこの自治体でも同一のサービスを行っている訳ではありません。また、全額費用を負担してくれるとも限りません。
こちらで用意すべき書類や手続きの内容についても、各自治体によって異なることは理解しておく必要があります。
認知症への配慮
自治体が生前整理の支援を行う例として、認知症で施設に入居するケースが挙げられます。施設への入居となると、持ち家の場合は特に、空き家のまま放置することになってしまいます。
空き家問題も大きな社会問題となりつつあり、衛生や防災面での懸念も出てきてしまうため、行政としても早めに対応したいと考えるのは当然でしょう。
なお、行政が生前整理の支援をする場合は、住居に残された家財道具の全面撤去が原則となります。自治体が行う生前整理は、家や部屋をきれいにして明け渡すのが目的です。
生前贈与の相談は居住先の自治体へ
生前整理の主な責任は、本人または親族にあるといえます。また、本人に身寄りがない、認知症という場合は、成年後見人や弁護士が手続きを代行して生前整理を行います。
いろいろな事情があり、特に生前整理への金銭的援助を必要とする人は、自治体の福祉課に相談してみることをおすすめします。
生前整理について事前に考える必要性
行政サービスは、生きている人に向けて行われます。生前整理は、本人や親族が行なうのが基本ですが、本人が認知症など、諸般の事情で対応不可の場合は、住まいがある自治体に相談することができます。
自治体によって考え方や受けられるサービスが異なることは理解しておきたいものです。自分が望む方法で生前整理するには、事前によく考え、必要な対策を講じておくのがポイントです。

記事監修者
小野税理士事務所代表の小野 聰司。
平成21年の12月に小野税理士事務所を開設し、多くのお客様のサポートをしている。