老人ホームの入居に身元保証人は必要?連帯保証人・身元引受人との違いとは?

2022/07/08

身元保証品の記事

老人ホームに入居する際、多くの場合「身元保証人」または「連帯保証人」「身元引受人」が必要となることをご存知でしょうか。

家族のあり方や生き方の多様化に伴い「老後は老人ホームなどの施設で過ごしたい」と考えている方も多いのではないでしょうか。また少子高齢化や核家族化が進み、一人暮らしのシニアもますます増えている現代では「いざという時に、身元保証人を頼める人がいない場合はどうしたらいいの?」と不安に思われている方もいらっしゃるかと思います。

この記事では、老人ホーム入居時の身元保証人に関する基本知識を始め、身元保証人を頼める人がいない場合の対処法まで詳しくご紹介していきます。いざという時に慌てないためにも、事前に頭に入れておくと安心です。

①老人ホームの入居に「身元保証人」はなぜ必要?

一般的に老人ホームに入居する際には、通常の賃貸住宅の契約時と同様に「身元保証人」または「連帯保証人」「身元引受人」の提示を求められます。

保証人は、ホーム側が責任を負えない事態や運営に支障をきたす事態が発生した際、その責務を負う役割があります。具体的には、入居・入院・手術時などの手続きやサポート、緊急連絡先としての対応、入居費用の支払いが滞った際の連帯保証、身柄の引き取りなどが挙げられます。

保証人の提示は、老人ホームを運営する上で発生しうる、さまざまな事態に対するリスク管理のひとつと言えます。

②身元保証人・連帯保証人・身元引受人それぞれの違いについて

保証人の役割は大きく2種類に分けられます。手続き関係のサポートや緊急連絡先としての対応などの「身元保証」と、支払い債務の「連帯保証」です。それぞれの責務を負う者として、「身元保証人」と「連帯保証人」と区別して呼ぶことがあります。また、入居者が亡くなられた際の身柄の引き取りや逝去後の手続きを担う者をして「身元引受人」と呼びます。
施設によっては「身元保証人」「連帯保証人」「身元引受人」のそれぞれを明確に区別しておらず、これらの役割を担う人を総じて「保証人」や「身元引受人」と呼ぶケースも多くあります。

③身元保証人と成年後見人の違いについて

「成年後見人」とは、加齢や認知症などによって判断能力が不十分な「被後見人」に適用される制度です。成年後見人の主な役割は、財産管理や身上監護です。病院搬送時などの手続きのサポートなど、一部身元保証人の役割と重複している部分もありますが、本人に代わって法律行為(契約・手続き)を行うのが成年後見人の主な役割となります。債務の保証や身柄の引き取りなどは通常行いません。

つまり、成年後見人が身元保証人の役割をすべて果たせるわけではなく、成年後見人とは別に身元保証人を求める施設も少なくありません。一方で、施設によっては「成年後見人が選任されている場合は、費用の支払い等は問題ないだろう」との判断で、保証人をつける必要がないケースもあります。

④老人ホーム入居時に必要な「身元保証人」の主な役割について

下記では、老人ホーム入居時に必要な「身元保証人」の主な役割についてご紹介していきます。ただし、身元保証人役割や役割や責任の範囲については、施設によっても異なります。入居費用などの支払いが滞った際の責務を始め、死去後の手続きなど、場合によっては大きな責任を負うことにもなります。

たとえ近しい関係であっても、名前を書くだけだからと安易に契約を結ぶことは望ましくありません。身元保証人を頼む際や引き受ける際は、事前に誓約書の内容や条件をしっかり理解しておきましょう。

(1)入居時や生活する上での各種手続き

入居の準備を自分で行うのが難しい場合、身元保証人が代わりに行うことがあります。具体的には、必要書類や生活品などの準備を始め、入居時の事務手続きなどが挙げられます。また、銀行の手続き、年金・保険に関する行政関係の手続きなど、必要に応じて生活面でのサポートを行います。

(2)本人に代わる意思決定、介護・治療方針の判断

保証人は、本人と共にケアプランについての説明を受けることがあります。第三者に同席してもらうことで、不安を軽減し理解を深める狙いもあります。また、認知症などにより本人の判断能力が十分ではない場合、本人に代わってケアプラン(場合によっては治療方針)などの説明を受け、意思決定を求められる場合があります。

(3)緊急時の連絡先としての対応

入居中に怪我や事故・病気など、想定外の事態が発生した場合、身元保証人は緊急連絡先として対応することになります。病院搬送などを行う場合、基本的に保証人が駆けつけるまでは施設のスタッフなどが付き添うことになりますが、保証人はできる限り速やかに対応する必要があります。シニア世代になると、怪我や病気のリスクも高く、緊急連絡が入る可能性も少なくありません。そのため、親族であっても「遠方に住んでおり、緊急時の対応が困難」という理由で保証人として認められないことがあります。

(4)入居費などの支払いが滞った際の支払い

入居費用などの支払いが滞った場合、身元保証人に支払いの義務が発生するケースがあります。前述の通り、施設によっては保証人とは別に連帯保証人を立て、支払いの債務については連帯保証人に求めることもあります。後のトラブルを防ぐためにも、身元保証人を引き受ける際は、支払い義務についての項目は特にしっかりと確認しておきましょう。

(5)身柄の引き取り・葬儀の手配・逝去後の事務手続き

入居者が退去することになった場合や亡くなった際には、身柄を引き取る役割があります。具体的には、退去時の事務手続き、私物や遺留品の引き取り、未払い分がある場合はその清算、居室の原状復帰などが挙げられます。また場合によっては、葬儀の準備や逝去後の事務手続きなどを担うケースもあります。

⑤老人ホーム入居時の「身元保証人」になるための条件とは?

身元保証人になるための条件は施設によっても異なります。支払いの責務が発生しない保証人には、経済力などの条件を求めずに「成年者であること」を条件としているケースも多くあります。一方で、入居費や医療費などの支払い義務が発生する場合は「支払い能力を有する成年者であること」を条件とするのが一般的です。また、同居の家族ではなく、生計を別にしている「別居家族」を条件としている場合もあります。

一般的に配偶者、子、親など身近な家族が身元保証人になるケースが多く、中には原則として親族であることを条件としている施設もあります。ただし、親族であっても「高齢である」「収入が不安定」などの理由で保証人として認められないこともあるので注意が必要です。また、条件を満たせば親族以外の友人・知人が引き受けることが可能なケースもあります。

前述の通り身元保証人には多くの役割が求められ、場合によっては大きな責任を負うことになります。身元保証人になるための条件は施設によっても異なりますが、基本的に「緊急時に本人に代わってきちんと対応できること」が求められています。保証人契約を交わす際は、依頼する側も引き受ける側もしっかりと役割や責任の範囲について理解しておく必要があります。

⑥老人ホーム入居時の「身元保証人」は何人必要?

「身元保証人」「連帯保証人」「身元引受人」の全ての役割を担う保証人を1名立てるケースと、身元保証・身元引受を担う「身元保証人(身元引受人)」と、経済的な債務を負う「連帯保証人」を分け、それぞれに1名ずつ立てるケースがあります。施設によって保証人の責任の範囲や契約内容が異なるため、事前にしっかりと確認しておきましょう。

⑦老人ホーム入居時の「身元保証人」は変更できる?

老人ホーム入居契約時に決定した身元保証人は、後から変更することも可能です。その場合、新たに保証人契約を結び直すことになります。保証人がその役割を果たすのが困難になった場合や亡くなった際には、速やかに施設側にその旨を伝え、新しい保証人を立てる必要があります。

⑧老人ホーム入居時に「身元保証人」を頼める人がいない場合の対処法について

少子高齢化や核家族化に伴い、一人暮らしのシニアも増えている現代では、いざという場面で「身元保証人を頼める人がいない」とお困りの方も少なくありません。また保証人を引き受けてくれる人がいても「周囲にできるだけ負担をかけたくない」とお考えの方も多いかと思います。ここでは、身元保証人を頼める人がいない場合はどうすれば良いのか、その対処法についてご紹介していきます。

(1)身元保証人の提示が不要な施設を探す

ここまでご紹介してきた通り、現在多くの老人ホームでは入居時に身元保証人が必要となります。一方で、中には身元保証人が不要な施設も存在します。また、成年後見人が選任されている場合は、身元保証人が必要ないというケースもあります。入居条件についての詳細は、直接施設に問い合わせてみましょう。

(2)地域包括支援センターや自治体の支援窓口に相談してみる

地域包括支援センターは、地域住民の健康維持や生活の安定のために、医療や福祉に関する援助・支援を行っている機関です。身元保証人を頼める人がいない場合や、いざという時に身近に頼れる人がいない場合は「地域包括支援センター」に一度相談してみることをおすすめします。また、市区町村で独自の相談窓口を開設しているケースもあります。お住まいの市区町村のホームページなどから問い合わせてみましょう。

(3)法人が提供する「身元保証サービス」を利用する

身元保証人を頼める人がいない場合は、法人が提供している「身元保証サービス」を利用するという方法もあります。身元保証サービスとは、ご家族や親族の代わりに業者が身元保証人を引き受けてくれるというものです。サービス内容や利用料金は業者によっても異なりますが、身元保証の他にも、入居・転居・日常生活のサポートや、逝去後の手続きなどを含めて任せられるものもあります。

身元保証サービスを提供している企業は、民間、社団法人、NPO法人などさまざまです。身近に頼れる人がいない方にとって、とても心強いサービスではありますが、中には法外な料金を請求する悪徳な業者も存在します。初期費用だけ見ると安価でも、年会費や月額費用、サービスごとの追加料金などを含めると高額になっていた、というケースも少なくありません。利用する際は企業情報を始め、専門家との提携の有無、オプション料金の有無などを事前にしっかり確認した上で検討することが大切です。

まとめ

老人ホームの入居を検討する際は、どのような施設を選ぶかももちろん重要ですが、「身元保証人を誰に頼むか」というのも重要なポイントです。頼める人がいない場合や、できるだけ家族に負担をかけたくないという方は、保証サービスの利用なども視野に入れ、いざという時に慌てないように、身元保証人の必要性や役割をしっかりと理解しておきましょう。

小野 聰司

記事監修者

小野税理士事務所代表の小野 聰司。
平成21年の12月に小野税理士事務所を開設し、多くのお客様のサポートをしている。