遺言者が認知症の場合の遺言書は有効?遺言書の判断基準や対策方法を解説
2023/06/30
遺言書は遺産の配分に関する意思を明確に示す重要な法的文書です。しかし、遺言書が正当に作成され、適用されるためには遺言者の精神状態や法的な手続きなどが適切であることが必要です。
この記事では、遺言者が認知症の場合による遺言書の有効性、判断基準、そして遺言書が無効とされたときの対策方法などを詳しく解説します。
目 次
遺言者の意思能力と判断基準
遺言能力の判断には、遺言者の健康状態が大きく関わります。その中でも、認知症の状態にある遺言者の遺言能力は症状の進行度によって異なります。
例えば、重症の場合は遺言書の有効性が認められない場合が多いです。ただし、認知症の症状がある場合でも「ルーシッド・インターバル(明瞭間隙)」と呼ばれる、認知機能が一時的に回復する瞬間があります。
この期間中に遺言書を作成することで、遺言者本人の意思が反映された遺言書を作成することが可能です。しかし、この期間を見極めるのは非常に難しいため、医師や専門家の意見を得て弁護士経由で遺言書を作成するようにしましょう。
さらに、長谷川式認知症スケールなどの評価ツールを用いて、遺言者の認知症の程度を評価することも重要です。この評価は遺言能力の判断において、遺言者の意思が適切に表現されているかどうかを確認するための重要な判断材料となります。
医療記録や介護記録などの客観的な証拠は、認知症の進行具合や遺言能力の有無を示すために不可欠です。これらの証拠は、遺言者が遺言を作成した時点での精神状態を詳細に示すことができ、遺言書の有効性について後日問題が発生した際の重要な証拠となります。
遺言書の有効性を巡る紛争とその解決
遺言書の有効性に疑念が生じ、遺産相続についての紛争が発生した場合、解決のために法的な手続きを取る必要があります。
これは通常、家庭裁判所に調停を申し立てるか、訴訟を起こすことにより行われます。調停や訴訟の過程では、遺言者の遺言能力や遺言書の作成状況などが詳細に検討され、遺言書の有効性が判断されます。
争族を避けるための遺言書作成のポイント
遺言書が有効と認められるためには、幾つかの注意点があります。一つは、遺言書を作成する際、遺言者が遺言能力を有していたことを証明することです。これは、医師による診断書や遺言者が認知症等の精神疾患を患っていなかったことを証明する医療記録等を保管しておくことで証明できます。
さらに、遺言書の内容が遺言者の意志を明確に反映していることを確認することも大切です。遺言者が遺言の内容を十分に理解していること、遺言の内容が曖昧でなく、遺言者の意志を明確に表していることを確認するようにしましょう。
遺言書が有効と認められるためには、幾つかの注意点があります。一つは、遺言書を作成する際、遺言者が遺言能力を有していたことを証明することです。
これは、医師による診断書や遺言者が認知症等の精神疾患を患っていなかったことを証明する医療記録等を保管しておくことで証明できます。さらに、遺言書の内容が遺言者の意志を明確に反映していることを確認することも大切です。
遺言者が遺言の内容を十分に理解していること、遺言の内容が曖昧でなく、遺言者の意志を明確に表していることを確認するようにしましょう。
遺言書が無効とされた場合の対策
遺言書が無効と判断された場合でも、公正な遺産分割を行うための対策がいくつか存在します。各対策は法律により規定されており、これらを適切に活用することで、遺産の公平な分割を図ることが可能です。
遺留分侵害額請求
まず考えられる対策が「遺留分侵害額請求」です。これは遺言によって法定相続人の遺留分が侵害された場合に、侵害された遺留分相当額を請求することができる制度です。
遺留分とは、法律が定める最低限度の相続権で、親族間の生活保障を目的としています。遺留分侵害額請求は、遺留分を保証するという遺産分割の基本原則を守るための対策と言えます。
特別受益の持ち戻し
遺言者が死亡する前の2年以内に特別に贈与した財産について、遺産分割の対象に加えることができる制度です。
この対策は、遺言者が遺産を一部の相続人に偏って分けることを防ぐ目的で設けられています。遺言者が死去する前に贈与により財産を減らしてしまった場合でも、特別受益の持ち戻しにより公正な遺産分割を行うことができます。
寄与分の考慮
寄与分の考慮は介護を担っていた相続人に対して認められるものです。介護によって遺言者の財産が増加した場合、その寄与分を考慮して遺産分割を行う制度になります。これにより、遺言者への日々の献身的な介護も寄与分として認められれば、相続分が増えるのです。
公正証書遺言を検討しよう
公正証書遺言は公証人によって作成される遺言書の形式です。具体的には、遺言者が公証役場に出向き、自分の意志を公証人に伝え、その内容をもとに公証人が遺言書を作成します。
そして、公証人と遺言者がそれぞれ署名及び捺印を行い、公証人が保管します。公正証書遺言の最大の特徴は、その有効性の高さです。遺言者が死亡した時点で自動的に効力を発揮し、遺言者が望んだ通りの遺産分割が可能となります。
さらに、公証人が遺言者の意思能力を確認し、遺言書を作成するため、遺言書の内容が遺言者の意志を正確に反映していることが確実になります。これにより、遺言書の有効性を巡る争いが発生する可能性が大幅に減少します。
また、公正証書遺言には他の形式の遺言にはないメリットが存在します。遺言者が亡くなった後、公証人が遺言書を家庭裁判所に提出し、家庭裁判所から遺言執行許可が下りると、遺言執行者が遺言通りに遺産分割を行うことができます。
この流れにより、遺産分割がスムーズに進むだけでなく、遺産に対する税金の計算や支払い、遺産の保管・管理などの手続きも円滑に進むというメリットがあります。
さらに、公正証書遺言の作成過程で公証人が法的な観点からアドバイスを提供するため、遺言者は自分の意志を法的に適切な形で表現することが可能です。
事前に遺言書を作成することが大切
遺言書は、遺産分割を円滑に行い、遺産相続に関するトラブルを防ぐための重要な書類です。遺言者の意思能力の確認、遺言書の作成過程の明確さ、そして適切な法的手続きの正確な実行などが遺言書の有効性を高めます。
認知症の症状があっても、軽度の段階である場合は法的な公的書類として認められます。そのため、遺言能力が損なわれる前に遺言書を作成し、保存することが大切です。

記事監修者
小野税理士事務所代表の小野 聰司。
平成21年の12月に小野税理士事務所を開設し、多くのお客様のサポートをしている。