心までスッキリ!生前整理のやり方と手順

2022/11/11

「立つ鳥跡を濁さず」は、「去る者は見苦しくないように、後始末をして行くべきだ」という意味のことわざです。日本人らしい考え方であり、近年では「終活」という言葉も一般化して、生きているうちに身辺をきれいに整理しておきたいという人も増えています。ここでは生前整理とは何をするのか、どう行えば良いかなどについて解説します。

生前整理は終活の1つ

就活は「就職活動」の略称ですが、終活は何の略称なのかがはっきりしません。「人生の終わりに向けた活動」や、「人生の終わりと向き合うための活動」などと説明されます。

週刊誌で使われたことが始まりのようですが、言葉ができた当初は葬儀のことを決めたりお墓を用意したりすることを指していました。

終活という言葉が定着してからは、医療や介護について意思表示ができるうちに自分の希望を表明したり、相続の準備をして遺言書を作成したりなど幅広い意味で使われています。生前整理も、「人生の終わりに向けた活動」のうちの1つです。

生前整理とは何を整理すること?

生前整理の反対語は遺品整理です。遺品整理では人が亡くなった後に、遺族によって故人の持ち物が整理されます。

必ずしも捨てるわけではなく、使える物を欲しい人に分けたり、故人の思い出の品として保管することも可能です。それに対して生前整理は、人生の終盤に自分で行う大がかりな整理整頓です。不慮の事故や災害などで、突然に死が訪れることもあります。

病気で入院すれば、自分で身辺整理をしたくてもできません。認知症で意思表示ができなくなることも考えられます。高齢になれば、体力的に無理ということもあるかもしれません。そのため生前整理は、早い時期から始めるのが適切です。

生前整理と言うと持ち物の整理のように考えがちですが、持ち物と一緒に財産やデジタルデータなども整理します。財産には現金や預貯金のほか、株式や不動産、貴金属や美術品なども含まれます。

パソコンやスマートフォンなどのデジタル機器の中には、個人のデータが詰まっています。サブスクリプションサービスなどを契約している場合など、死後に遺族が気付かないと料金を滞納することになりかねません。延滞料金がかかると、さらに費用がかさみます。

生前整理をする時点で処分できないものは、処分を誰かに託すのも生前整理の一環です。高齢者施設に入所するのを機に、生前整理を行うこともできます。

生前整理のメリット

生前整理の大きなメリットは、人に見られたくない物を自分で整理できることです。品物だけでなく、見られたくないサイトの履歴を消去したりアカウントを削除したりできます。見られたくないけれどまだ利用したい場合は、家族など信頼できる人に死後の処分や削除を依頼しましょう。

人が生きている間には、多くの物が溜まります。ゴミとして処分する場合は分別が必要になり、遺品整理をするには時間と手間がかかります。離れて住んでいる場合には、遺品の整理に通うのにも費用と時間が必要です。

遺品整理の事業者に任せた場合には、遺族が整理する場合よりも費用がかさみます。生前整理で持ち物が減っていれば、これらの家族の負担を減らすことができます。また、生前整理によって財産がまとめられていると、遺族は故人の財産の中から葬儀費用などを捻出することが可能です。

金融機関は顧客の死亡を確認するとトラブルを防いだり、相続を確定したりするために口座を凍結します。しかし、口座のある金融機関や暗証番号などがわかれば、突然の死だったとしても遺族はほかの相続人と相談して、口座が凍結される前に葬儀費用などを引き出すことができるので費用の負担を減らせます。

遺産相続のためには、財産目録を作成しなければなりません。財産目録ができていると、相続人はかかる時間や手間を省くことができます。

ほかにも、生前整理では財産の整理も行うため、遺産相続について考えるようになるというメリットもあります。遺産相続は相続人である子供からは言い出しにくいので、親の側から切り出すと話がスムーズです。

死後に遺産相続がもとで子供たちが争うことがないように、弁護士などの専門家に依頼して遺言書を作成することもできます。相続税の節税対策が必要なら、税理士などの専門家に相談しましょう。また、生前整理で物が少なくなると、物に躓いたりして転倒するリスクが減ります。

掃除もしやすくなって、清潔な環境で暮らすことが可能です。家の中だけでなく、相続などの問題も片付くので気持ちもスッキリします。

自分で生前整理をする時のやり方と手順

持ち物の量は多いので、生前整理に特に期限がない場合には急がずにゆっくりと行いましょう。初めにどうしても残したい物と使っていない不要な物を選び、いらない物は処分します。

そして、人に見られたくない写真や日記などを含めた、いらない物の処分を優先します。どうしても残したい物は、手元に置きたい物と誰かに譲りたい物に分けます。手元に置きたい物は、死後に家族に処分してもらうことになります。

着物などの金銭的価値や愛着のある物や、趣味で収集したコレクションなどは、生前に喜びそうな人に譲ってしまいましょう。形見分けの希望として書き残しておくのも有効です。それ以外の物には現在使っている物と、すぐには処分を決められない物があり、どちらも死後に処分してもらう物になります。

処分を決められない物は、箱などに入れて保管します。処分の方法を家族に任せれば、お互い気持ちの負担が軽減されます。

デジタルデータなどの整理をするには、まず自分が持っているアカウントや契約を書き出します。デジタルデータやSNSのアカウント、ストリーミングの契約などは、できるだけ削除したり解約したりしておきましょう。

利用を続けるサービスは書き残して、IDやパスワードなどが家族にわかるようにしておきます。IDやパスワードは、削除や解約に必要です。自分で削除しないデジタルデータの処分も、忘れずに家族などに依頼しましょう。

財産を整理するには預貯金などの金融資産や不動産、貴金属など、自分にどのような財産があるのかをリストにします。リストを見ながら老後資金や、遺産として誰に何を譲るかを具体的に考えましょう。財産目録を作っておくと、法定相続をする際の相続人の負担を減らせます。

相続人と話し合ったうえで遺言書を作成すれば、相続で親族が争うことを避けられます。財産の全貌を知ることである程度まで相続税の額を知ることができるので、税理士やファイナンシャルプランナーなどと相談して節税対策をすることも可能です。

高齢者施設に入る場合の生前整理では、持ち物を最小限に減らす必要があります。どうしても残しておきたい思い出の品などはトランクルームで保管するなどしておくと、見たくなった時に家族に出して来てもらうことができて心の支えになります。

デジタルデータを含めた持ち物の処分を誰かに託す場合には、エンディングノートが便利です。エンディングノートは、家族や友人などに言っておきたいことなら何を書いても良いノートです。金融機関の暗証番号などを書いておくこともできます。

その場合は、ノートの保管に注意しましょう。自分自身のためのメモとして記入しても構いません。ノートも、自分の好みで決めることができます。市販のエンディングノートなら、終活で行うべき項目があらかじめ記載されています。

項目があるからと言って、すべて記入する必要はありません。ほとんどのエンディングノートには、財産整理の項目もあります。

プロに生前整理を依頼するには

生前整理は、遺品整理を専門とする業者を利用する人も少なくありません。生前整理をプロに任せると早く片付けが終わり、家具や家電などの大きなものの整理では、体の負担やケガのリスクを減らせます。

また、分別する必要もありません。残す物の保管の仕方などのアドバイスをもらえることや、専門家と提携しており遺言書の作成や不動産の売却などについて相談できるサービスを受けられることもあります。

業者選びのポイントの1つは、資格の有無です。生前整理の資格には、「生前整理認定作業士」や「生前整理診断士」などがあります。

遺品整理の資格である「遺品整理士」などの資格があれば、廃棄物処理法などの法律に詳しく、リサイクル品の取り扱いも心得ています。先に述べた通り生前整理と遺品整理の違いは整理の時期と行う人で、整理した物の処分方法は同じです。

複数の事業者から見積もりを取って、適正な価格の事業者を選びましょう。

生前整理で人生後半のプランを立てよう!

生前整理は、これからの人生をより良く生きるために行うものです。不要な物がなくなり、老後の資金の目途を立てることで、これから挑戦してみたいことが見つかるかもしれません。子供たちと相談して遺言書を作成しておけば、死後に子供たちが争うことも避けられます。生前整理は、いつから始めても構いません。早ければ早いほど余裕をもって生前整理が行え、取りこぼしもなくなります。

小野 聰司

記事監修者

小野税理士事務所代表の小野 聰司。
平成21年の12月に小野税理士事務所を開設し、多くのお客様のサポートをしている。