遺言書はどうやって作る?種類・作成の流れとポイントを解説

2023/07/01

遺言書はどうやって作る?種類・作成の流れとポイントを解説

元気なうちに自分の遺言書を作っておきたいと考える人も少なくないでしょう。しかし、遺言書は普段なじみのない書類であるため、どのように作成すればよいか具体的にはわからないかもしれません。遺言書にはいくつかの種類があります。

法に則った形で作成しなければならず、下調べや書類の用意など事前の準備も不可欠です。そこで本記事では、遺言書の作成について解説。遺言書の種類や作成の流れ・ポイントなどを説明します。

遺言書とは

遺言書とは、故人が生前に自分が亡くなった後の財産の処理などについて記す書類のことです。遺言書を作っておけば、遺された家族や親族に自分の遺志を示せます。遺言書がないと、故人が自分の財産をどのようにしたかったかがわかりません。

そのため、相続人同士で遺産を巡り揉め事が発生しやすくなります。相続トラブルを避け、相続人達が円満に財産分与手続きを行えるよう、遺言書を作成しておくことが非常に重要です。

遺言書の種類

遺言書の作成を行う前に、決めておかなければならないのが遺言書の種類です。遺言書には次に挙げる3種類があります。それぞれの内容やメリット・デメリットを説明します。

自筆証書遺言

遺言者本人が自筆で作成する遺言書です。本文(日付・署名・押印以外の部分)は自筆がマストで、パソコンなど自筆以外の方法で書かれたものは無効になります。遺言書の保管は自分で行うか、もしくは法務局に依頼するかどちらかです。

自分で保管する場合は開封前に裁判所による検認が必要。公証人・証人の用意は不要です。メリットは、遺言書の中では比較的作成が簡単なこと。また、自分しかいない環境で遺言書を書けば内容を秘密にできます。

デメリットは、遺言書の内容に不備があった場合、遺言書自体が無効になってしまうことです。また、自分で保管するため、紛失してしまったり、誰かに偽造・隠匿されたりといった可能性もあります。

公正証書遺言

公正証書として作成する遺言書です。公証人と証人に遺言内容を伝えて作り、遺言書の保管も公証役場で行います。裁判所の検認は不要です。

メリットは、遺言者が自筆しなくてよいので、身体的な理由などから遺言者が手書きできない場合も遺言書を作成できること。また、不備の可能性がないこと、公的機関が作成・保管するため紛失・偽造・隠匿が防げることなどもメリットです。

デメリットは、書類準備や手続きなどで実際に作成してもらうまで時間・手間がかかることでしょう。費用も発生します。その他、遺言内容を秘密にできないことも人によってはデメリットになり得ます。

秘密証書遺言

遺言者が本文を作成(自筆でもパソコンなどを使用しても可)した遺言書を、公証役場で封印する遺言書です。保管自体は遺言者本人が行います。裁判所の検認は必要です。メリットは、遺言書の本文を公証人・証人に見せないので、内容を秘密にできること。

また、公正証書遺言よりコストが低いこともメリットと言えます。ただし、公証役場で遺言本文を確認するわけではないので、内容に不備があれば無効になる可能性があることはデメリットです。

遺言書作成の流れとポイント

それでは、遺言書作成の流れとポイントを遺言書の種類ごとに見ていきましょう。なお、すべての種類に共通して、作成の前に自分の財産を全て調べ財産目録にしておく、誰にどのくらい財産を渡すのか決めるといった準備は行っておいてください。

自筆証書遺言の作成の流れ

自筆証書遺言として遺言書の他に必要なのは、財産目録・預貯金の口座がわかる書類(通帳コピーなど)です。これらを用意して遺言書を書きます。自筆証書遺言は自分で手書きしなければならないので、他の人が見たときにしっかり読めるよう、丁寧に作成することが大切です。

文字が不明瞭にならないように油性ペンを使用する、耐久性の高い紙を選ぶなどもポイント。また、遺言書の書式は法に則ったものでなければせっかく作っても無効になってしまうので、書き方は十分確認してください。

なお、遺言書は修正する場合の方法も非常に煩雑。修正方法も誤ると不備になるので、間違ってしまったら1からの書き直しが無難です。書式に誤りがない完璧な遺言書を作成できるか不安な場合は、弁護士・行政書士・司法書士など、法律に詳しいプロに依頼しながら作成するのもひとつです。

遺言書の作成が完了したら、できれば封筒に入れ封印した方が良いでしょう。封筒への封入は法律で決まっているわけではありませんが、書類を封印しておかないと、遺言書としての効力を発揮する前に人目に触れたり、偽造されたりなどの可能性が高まります。

公正証書遺言の作成の流れ

公正証書遺言を作成する場合は、さまざまな必要書類の準備が必要です。遺言者本人の印鑑証明書・実印・戸籍謄本はマスト。その他、財産を相続させたい人の戸籍や住民票なども必要です(何が必要かは遺言者と相続人の関係によります)。

また、財産の種類によっても必要書類が異なるので、しっかり確認の上用意します。必要書類がすべて揃ったら、最寄りの公証役場に出向き手続きのスタートです。始めに公証人と打ち合わせを行い、遺言書の案を作成してもらいます。公証役場を初めて訪れた日は、打ち合わせまでで終了です。

遺言書の案ができあがったら、再度公証役場を訪れ、遺言者・公証人・証人が内容を確認しながら実際の遺言書を作成していきます。なお、公証役場では相続に関する相談などは対応していないので注意してください。

秘密証書遺言の作成の流れ

秘密証書遺言を作成する場合、途中までは自筆証書遺言の作り方とほぼ同じです。必要書類を揃え、遺言書を自分で作成します。自筆証書遺言と異なる点は、前の項目でも触れた通り、本文を手書きする必要がないことです。

パソコンを使ったり、誰かに代筆してもらったりするのも大丈夫。ただし、署名は必ず自筆です。遺言書を封筒に封入したら、最寄りの公証役場に持って行きます。そして、公証人・証人に遺言書の証明をしてもらい、持ち帰って作成完了です。

なお、秘密証書遺言を作成する人は非常に少なく、遺言書の中ではマイナーな種類だと言えます。

遺言書の種類や作成の流れを理解して不備のない遺言書を作ろう

遺言書は遺言者本人が自分の財産をどのようにしたいのか、しっかり表すための重要な書類です。遺言書の各種類の特徴を把握し、どの種類を選ぶか熟考の上、作成してください。

内容に不備があると作成した遺言書が無効になってしまうため、不安な場合は弁護士など法のプロのサポートを利用する、公正証書遺言を選ぶなどもよいでしょう。

小野 聰司

記事監修者

小野税理士事務所代表の小野 聰司。
平成21年の12月に小野税理士事務所を開設し、多くのお客様のサポートをしている。