終活はいつ・何から始める?終活のポイントとやることリスト
2022/07/24
「終活」とは「人生の終わりのための活動」のことを指します。過去には、新語・流行語大賞のトップ10にも選ばれたことで、日常生活の中で耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
終活と聞いて、ネガティブなイメージを持たれる方もいるかも知れませんが、人生の終わりについて考えることで、これまでの人生を振り返り、これからの人生を見つめ直すことにも繋がります。近年、平均寿命はますます延び「人生100年時代」とも言われています。
高齢化社会が進む今、人生の後半を豊かに過ごすためにも「終活」を初めてみてはいかがでしょうか。
とは言え「終活を始めたいけれど、何から手をつけていいかわからない」という方も多いかと思います。そんな方のために、この記事では終活の目的や、やるべきことなど、終活についての基本を詳しくまとめています。
目 次
「終活」とは?
終活とは「人生の終わりのための活動」のことを指します。具体的には、持ち物や資産を整理したり、もしもの時に備えての準備を整えていきます。
「終活」という言葉が一般的になったのは2010年頃からと言われていますが、その背景としてはさまざまな要因が考えられます。ひとつは、核家族化や少子化、高齢者の増加などによる「家族のあり方の変化」です。古くは成人した子供が親の老後の面倒を見る、というケースが一般的でした。
しかし高齢者が増え、その高齢者を支える若い世代が減っている昨今では、子ども世代に負担をかけられない現状があります。
更には未婚率の上昇に伴い、一人暮らしのお年寄りも今後ますます増えていくと予想されており、人生の最後をどのように迎えるのか、という課題に多くの人が直面することとなります。また、これまでに比べて個人の生き方も多様化する中で、自分らしく人生を終えるための「終活」への関心が高まっています。
「終活」の目的やメリットについて
まず始めに、終活の具体的な目的を整理しつつ、終活を行うことによって得られるメリットについて整理していきましょう。
亡くなった後も自分の意志を全うできる
終活の中で自分の考えや希望を整理し、エンディングノートなどに記しておくことで、亡くなった後も意志を全うすることができます。
遺産を誰に引き継ぐのか、葬儀や供養はどのような形を希望するかなど、具体的に残しておくことで人生の最期を自分らしく迎えることに繋がります。
遺された家族や周囲の人の負担を軽くする
重要な情報を整理し必要な準備を整えておくことで、遺された家族や周囲の人の負担を軽くすることができます。
核家族化が進む現在では、親や家族と離れて暮らしているケースも珍しくありません。また近くに住んでいたとしても、親や家族が普段どのような生活を送っているのか知らないことも多いかと思います。
もしもの時に誰に連絡をすれば良いのか、葬儀や供養をどのような形で行えば良いのか、遺産や遺品をどのように整理するべきかなどが、何もわからない状況では、遺された家族や身近な人は一から情報を集めることとなり、多くの負担が生じてしまいます。
ただでさえ、逝去後は悲しみや喪失感の中で、慌ただしく葬儀の準備や煩雑な手続きを行う必要があります。情報を整理し必要な準備を整えておくことで、物理的な負担を軽くすることはもちろん、遺された人たちが「本人の希望を叶えてあげることができた」と安心して見送ることができるでしょう。
これまでの人生を見つめ直し、今後どう生きるかを考えるきっかけになる
終活は、これまでの人生を振り返り、これからの人生を見つめ直すきっかけにもなります。持ち物や人間関係を整理したり、人生の最期をどのように迎えたいかを考えることで「本当に大事にしたいもの」や「今度の人生をどのように生きたいか」が見えてくるはずです。終活は、人生の後半を豊かに過ごすためにも必要な時間と言えるでしょう。
「終活」でやることリスト
ここでは、終活でやるべきこととして代表的な事項をまとめています。「終活を始めたいけれど、何から手をつけていいかわからない」という方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
生前整理(不用品などの整理)
生前整理とは、元気なうちに自分の持ち物や身辺を整理し、片付けを行うことを指します。あまりにも遺品が多いと、遺された人はその処分や仕分けのために、膨大な時間や手間をかけなくてはなりません。
また、物や量によっては処分時に多額のお金がかかることもあり、費用面においても大きな負担となります。また、アルバムや写真、思い出の品なども、遺された方が処分に困るものの代表となります。必要なものだけ残す、譲る、データ化するなどして、少しずつ整理していくと良いでしょう。
不要なものは手放し、残すものについては保管方法や場所、譲りたいものがある場合は譲り先をきちんと定めていきましょう。身の回りの整理を行うことで身軽になり、快適な生活を送ることにも繋がります。
デジタル遺品の整理
近年の遺品整理で問題になっていることのひとつとして「デジタル遺品」が挙げられます。デジタル遺品とは、スマートフォンやパソコンなどのデジタル機器内や、クラウド上に保存されている個人情報、SNS、プロバイダ、会員サイトの契約などのことを指します。
中でも、インターネット上に残された情報やデータ、会員登録などの削除には、多くの場合IDやパスワードが必要になります。まずは所有しているデジタル機器や、契約、解約に必要なIDやパスワードなどをまとめることから始めましょう。ただし、IDやパスワードの扱いには注意が必要です。生前は信頼できる人に託す、専門の業者に委託する、貸金庫に保管するなどの方法で適切に保管しておきましょう。
重要な個人情報が残されたデジタル機器、サイトなどに関しては、いざという場合は確実に処分してもらえるよう、信頼できる家族や知人に依頼しておくと安心です。
サービスの解約や見直し
契約中のサービスや保険の整理も重要です。必要以上の保険や現在利用していないサービスは、解約や見直しを検討しましょう。中でも、医療保険や生命保険の内容を見直すことは、今後の生活を考える上でも大切なポイントです。また、使っていないクレジットカードを所有している場合は、無駄な年会費などがかかっている可能性があるため解約しておくと良いでしょう。
資産・財産を把握する
自身の資産を把握し、相続先などを定めておくことも重要です。現金、預貯金、不動産、証券などの財産をお持ちの場合は、いざという時に備えて目録にしてまとめておくと良いでしょう。
自身が亡くなったあと、財産の相続が発生する際には、相続人などが財産目録を作成し相続財産を管理することになります。ただし、財産の調査自体に大きな手間がかかってしまう可能性があります。
あらかじめ財産を目録にまとめておくことで、不要な財産を処分したり、誰にどの財産を相続させるかを整理するきっかけにもなります。また、財産目録を作成することによって、おおよその相続税を計算することが可能です。
場合によっては、生前贈与することで節税に繋がるケースもあります。相続や税金についての疑問や不安は、弁護士などの専門家に相談してみると良いでしょう。また、加入している保険についてもしっかりと伝えておきましょう。
遺された家族が把握していなければ、請求漏れに繋がったり、相続の対象とならないことがあります。終活にかかる費用や、老後の資金についても合わせて把握しておくと安心です。
友人・知人の連絡先リストを作成する
家族や身近な人であっても、その交友関係までは把握できていないという方も多いのではないでしょうか。いざという場面で、遺された家族が「誰に連絡したら良いのかわからない」と困ってしまうケースが多くあります。
入院時や自身が亡くなった際、いざという時に連絡して欲しい方の名前、連絡先、住所、自身との関係性などの情報を整理しリスト化しておくと良いでしょう。また、年賀状のやりとりを行っている方であれば、ファイルなどに整理しておけば、遺された方が連絡を取る際にもスムーズです。
葬儀についての希望をまとめておく
自身の葬儀について、希望がある場合はまとめておきましょう。具体的には、喪主を誰に任せるのか、宗教・宗派、葬儀会社(生前予約している場合はその情報)、費用・予算について、規模(通夜・告別式の有無、一般葬儀、家族葬、直葬など)、戒名・法名、遺影の写真についてなどが挙げられます。
お葬式は、一般的に遺された家族や身近な人が故人を弔うために執り行われるものですが、最近では「自分らしい最期を迎えたい」「家族や身内に負担をかけたくない」などの理由から、生前に自身の葬儀の準備を行うケースも増えています。
事前に希望を伝えておくことで、見送る側も後悔のない葬儀に繋げることができます。特に希望がない場合は、家族に一任する旨をしっかりと伝えておきましょう。
お墓・供養についての希望をまとめておく
葬儀と同様、お墓についての希望もまとめておきましょう。具体的には、菩提寺の有無やその情報、希望の埋葬方法(散骨、納骨堂、合祀など)や予算などが挙げられます。特に希望がない場合は、家族に一任する旨をしっかりと伝えておきましょう。
また、お墓は守る人(承継者)がいることで維持されるものです。そのため、自身が亡くなったあと、先祖のお墓の承継者がいなくなる場合は「墓じまい」についても考える必要があります。また、承継者がいる場合でも、先祖のお墓が遠方にあり管理が難しい場合は、改葬(お墓の移転)を検討する必要があるかも知れません。
先祖代々のお墓の問題については、当人でないと簡単に決められないこともあります。親族などに負担をかけてしまわないためにも、自身が動ける間に対応しておくことをおすすめします。
遺言書を作成する
財産を自分の意思に沿って遺すためには「法律で定められた様式に則った遺言書」を作成する必要があります。遺言書は、満15歳以上で判断能力があれば誰でも作成可能です。一方で、認知症などを患い判断能力がなくなってしまうと作成はできなくなります。
一度作成した遺言書は後から書き換えることも可能です。遺言書が必要だと感じている方は、思い立ったタイミングで作成しておくと良いでしょう。
遺言書を作成する際は、無効や実現不能になってしまわないように、注意するべき事項があります。以下で、特に重要な3つのポイントをご紹介していきます。
「自筆証書遺言」にするか「公正証書遺言」にするかを決める
一般的な遺言書の方式は3種類あります。その中でも「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類が多く用いられます。
遺言者が自筆で記す遺言書が「自筆証書遺言」です。自筆証書遺言のメリットは、費用をかけずに比較的簡単に作成できる点です。一方で、法律に則った様式でないと無効になり、正式な遺言書として認められない可能性があります。
ただし、2018年に改正された相続法では自筆証書遺言に関する規定が変更され、2020年以降は法務局が自筆証書遺言を保管してくれるようになりました。これにより紛失や改ざんのリスクと言った自筆証書遺言のデメリットが改善されています。自筆証書遺言を作成する場合は、この制度の利用を検討してみても良いでしょう。
公証役場の公証人に関与してもらい、公正証書として作成する遺言書が「公正証書遺言」です。専門家の監修の上で作成するので、遺言書が無効となるリスクを避けることができます。作成にあたってはある程度の費用が必要ですが、法律で定められた様式に則って、確実に遺言書を作成するためには「公正証書遺言」がおすすめです。
公正証書遺言を作成するための前段階として、事前に自筆証書遺言を作ってみても良いでしょう。
「遺言執行者」を指定する
「遺言執行者」とは、相続人・受遺者(遺言で財産を遺された人)の代表として、遺言の内容を実現するための様々な手続きを行う者のことを指します。遺言執行者は、単独で「預貯金や不動産等財産の解約払戻し」や「名義変更等の手続き」を行うことが可能です。遺言執行者は、遺言書の中で指定する必要があります。
特に民法によって定められた「法定相続人以外」の人に財産を遺そうと考えている場合は、必ず遺言執行者を指定しておきましょう。
遺留分に配慮する
可能な限り相続者間での争いを避け、遺言の手続きをスムーズに行うために「遺留分」に配慮した遺言書を作成することをおすすめします。遺留分とは、相続人のうち一定の者(配偶者、子、両親など)に認められる「最低限の遺産取得分」のことを指します。
具体的には、配偶者や子であれば、法律で定められた相続割合の「2分の1」、両親の場合は「3分の1」を、それぞれ遺留分として請求できる権利を持っています。これはあくまでも「権利」なので行使しないという選択肢もあります。
つまり遺留分を侵害する遺言も一応は有効ですが、遺留分を持つ者が権利を行使し遺留分侵害額請求(続人・受遺者に対して遺留分を取り戻す請求)を行った場合、相続人・受遺者はこれに応じる必要があります。
エンディングノートを作成する
「エンディングノート」とは、いざという時に備えて家族や身近な人へ向けたメッセージを記すノートのことです。明確な決まりやフォーマットはありませんが、これまでの項目で紹介した内容(遺品、デジタル遺品、財産、連絡先リスト、葬儀、お墓、遺言書)についての情報、自身の意思や希望を具体的に記しておくと良いでしょう。エンディングノートを残しておくことで、遺された家族や身近な人は、情報収集や各種手続きを円滑に行うことができます。
ただし、エンディングノートは遺言書と違って「法的効力」を持ちません。亡くなったあとの手続きに必要となる情報をまとめておくという気持ちで作成すると良いでしょう。また、まずは自分の想いを整理したいという方や、遺言書の作成はまだ早いと感じている方にもおすすめです。終活の第一歩としてエンディングノートの作成から初めてみてはいかがでしょうか。
終活が一般的になってきた昨今では、文具屋などでエンディングノート専用のノートが売られていたり、自治体で無料配布しているケースもあるようです。使用するノートは手持ちのものでも構いませんが、デザインの好みや使いやすさで選ぶと良いでしょう。
いざという時に頼れる存在を確保しておく
いくら亡くなった後の準備を入念に行っていても、自分の意思や希望を託せる人がいなければ無駄になってしまう可能性があります。特に一人暮らしの方や身寄りのない方は、いざという時に頼れる存在を確保しておく必要があります。作成したエンディングノートなどは、信頼できる家族や身近な人に保管場所を事前に伝えておくか、状況に応じて託しておきましょう。
ただし、家族のあり方も以前とは大きく変わりつつある近年では「頼れる人がいない」「家族には迷惑をかけたくない」という方も多いかと思います。そのような方向けに、亡くなった後を含むさまざまな局面において、家族や親族に代わる役割を担うサービスも存在します。
そのようなサービスは、一般社団法人やNPO法人など様々な業者が提供しています。いざという時に頼れる人が身近にいないという方は、信頼できる業者を見つけておくと安心です。
まとめ
この記事では、終活の目的やメリット、やるべきことについてご紹介してきました。終活は遺された家族や周囲の負担を軽くし、自分らしい最後を迎えるために必要な行為と言えます。
ただし「早く終活を始めなくては」と焦る必要はありません。人生の終わりについて考えるところから、すでに終活は始まっています。
様々な情報を整理しながらやるべきことを考え、ひとつひとつ意思表示できる環境を整えていきましょう。

記事監修者
小野税理士事務所代表の小野 聰司。
平成21年の12月に小野税理士事務所を開設し、多くのお客様のサポートをしている。