高齢者が賃貸住宅を借りる際「保証人」がいない場合はどうする?

2022/07/30

賃貸物件を借りる際には一般的に「保証人」や「連帯保証人」を立てる必要があります。しかし、一人暮らしの高齢者の方など、保証人を頼める人がいない場合も多いかと思います。

ただ、保証人が見つからないからと言って、必ずしも賃貸住宅を借りることができないわけではありません。この記事では、保証人の必要性を始め、保証人が見つからない場合の対応策などについて詳しくご紹介していきます。

子どもの独立や配偶者との死別、退職など、生活環境が大きく変化する老後、「交通の便の良い場所へ引っ越したい」「階段のないコンパクトなアパートやマンションに住み替えたい」と、賃貸住宅への住み替えを検討されるケースは意外と多いもの。

そんな中で「保証人を頼める人が見つからず、賃貸住宅の契約が難しいのではないか?」と、不安に思われている方の参考になれば幸いです。

賃貸住宅を借りる際の「保証人・連帯保証人」の必要性について

一般的に、賃貸住宅を借りる際には「保証人」や「連帯保証人」を立てる必要があります。これは貸主(オーナー)側のリスクに備えるための仕組みです。借主(入居者)が家賃の支払いを滞納した場合や、住居設備の修繕費などの支払いができない場合、貸主は代わりに保証人や連帯保証人に対してその費用を請求することができます。

「保証人」と「連帯保証人」の違いについて 

「保証人」と「連帯保証人」とでは、その義務の重さが異なります。具体的な違いについて、以下で解説していきます。

保証人の義務について

「保証人」は、借主に支払い能力がある限り、貸主に請求された支払いを請け負う義務はありません。借主が家賃や住居設備の修繕費など支払うことができず、貸主から支払いを請求された場合、まず借主本人に請求するように主張することができます。ただし、借主本人に何度督促しても支払われない場合は、保証人が代わりに支払うことになります。

連帯保証人の義務について

「連帯保証人」には、借主本人と同等の支払い義務が課せられます。借主の支払い能力の有無に関わらず、貸主からの正当な請求に対する拒否権はありません。保証人よりも責任が重くなるため、連帯保証人を頼む際や引き受ける場合は十分に注意が必要です。

民法の改正により、2020年4月1日からは連帯保証人が保証する「上限額」を設け、予め契約書に記載する決まりとなっています。

高齢者が賃貸住宅を借りる際の「保証人」の条件について

前述の通り「保証人」や「連帯保証人」には、借主の支払いが滞った際に義務が課せられることになります。万が一のことを考えると、ご家族や親族であったとしても頼みにくいと考える方も多いのではないでしょうか。

特に単身の高齢者の方の場合、なかなか保証人になってくれる人が見つからない、頼める人がいないというケースが多くあります。また、保証人を引き受けてくれる方が見つかったとしても、貸主がその方を保証人として認めてくれないこともあります。

高齢者は相対的に見て、病気や怪我、孤独死などのリスクが高いと考えられています。保証人に求める条件は貸主によっても変わりますが、保証人には金銭面だけでなく「いざという時にサポートしてくれること」を求められているケースも多くあります。

ここでは、高齢者が賃貸住宅を借りる際、貸主側が「保証人」の条件として重視する3つのポイントについて解説します。

安定した経済力・資産

保証人はいざという時、借主に代わって支払いをする義務があるため、安定した経済力または資産が求められます。借主と同様に高齢者の場合や、年金生活者、収入が不安定な場合は、保証人として認められないことがあります。さらに、保証人は原則として、入居者である借主と「別世帯」である必要があります。

年齢について

高齢者の借主に何かあった際にサポートできるよう、保証人には借主よりも「若いこと」を求められることがあります。借主が高齢者の場合、必然的に配偶者やきょうだい、家族も高齢の可能性が高く、年齢がネックになって保証人として認められないケースがあります。

緊急連絡先としての役割

高齢者は相対的に見て、病気や怪我、孤独死などのリスクが高いと考えられています。そのため、保証人は金銭面だけでなく、貸主に何かあった際の「緊急連絡先」としての役割が求められます。病院や住居にすぐに駆けつけなければならない事態も想定されます。その際、遠方に住んでいるなどの理由によって、保証人として認められないケースがあります。

高齢者が賃貸物件を借りる際、保証人がいない時はどうれば良い?

前の項目で紹介したように、さまざまな理由から高齢者の方は保証人を見つけるのが難しいケースが多いと言われています。

高齢化が進む日本では、近い将来65歳以上の約半数がの方が一人暮らしの「単身世帯」になると予想されています。老後、自身が賃貸物件を借りる際、保証人が見つからない時はどうすれば良いのだろうと、不安に思われている方も多いのではないでしょうか。

保証人が見つからないからと言って、必ずしも賃貸住宅を借りることができないわけではありません。ここでは、保証人がいない場合の様々な解決策についてご紹介します。

公営住宅・UR賃貸など「保証人不要」の物件を選ぶ

保証人が見つからない場合は、公営住宅やUR賃貸など「保証人不要」の物件を選ぶという方法があります。

しかし保証人がいらない代わりに、収入基準を始め、さまざまな入居条件が設けられており、それを満たす必要があります。また、民間の賃貸に比べて物件数はそれほど多くなく、地域によっては希望するような物件自体が見つからない場合もあります。

入居を検討する際は、公営住宅を運営する市区町村やUR都市機構に相談してみましょう。

「家賃保証会社」に保証人を代行してもらう

「家賃保証会社」は、賃貸物件を契約する際に利用料を支払うことで、保証人を代行してくれる会社です。近年では、身内や親族に保証人をお願いする代わりに家賃保証会社を利用するケースも増えています。

家賃を滞納した場合、家賃保証会社が借主の家賃を立て替えることになります。借主は家賃保証会社からの請求に対し、立て替えてもらった分の家賃を支払います。

この家賃保証会社を利用するためには、年齢、職業、収入など、各保証会社の審査基準を満たす必要があり、高齢者にとってはハードルが高い場合もあります。また、初回契約時や契約更新時に保証料の負担が生じるので注意が必要です。

法人の「身元保証サービス」を利用する

「身元保証サービス」とは、民間企業、社団法人、NPO法人などが提供しているもので、賃貸住宅の保証人を始め、入院時や施設入居の際の保証人を請け負うサービスのことを指します。

保証人が必要となる場面は、賃貸契約時に関わらず、入院や手術時、老人ホームなどの施設への入居時など多岐に渡ります。家賃同様、医療費や施設利用料等が支払えなくなった場合に備えて、保証人を立てることを求められます。

高齢化、核家族化に伴って、一人暮らしや身寄りのない方が増える今「保証人を頼める人がいない」「離れて暮らす家族や親族に迷惑をかけたくない」という方も多く、そのような方を対象として始まったのが「身元保証サービス」です。介護保険が開始された2,000年頃から出てきた比較的新しいサービスですが、高齢化が進む今、ますます需要が高まっています。

サービスの詳しい内容や利用料金は運営元によって異なりますが、身元保証に加え、緊急時の対応や日常生活の支援など、一人暮らしの方が安心して生活を送れるよう、幅広いサポートを行う企業もあります。

身元保証サービスを検討する場合、事前にサービス内容や利用料金を比較検討しながら、いざという時に頼れる企業を選ぶことが大切です。

まとめ

賃貸物件を借りる際に、多くの方が直面する保証人に関する問題。特に高齢者の場合、金銭面だけでなく「もしもの際に対応してくれること」を保証人に求められるケースもあるでしょう。「保証人を頼める人がいない」「離れて暮らす家族や親族に迷惑をかけたくない」という方は、安心した老後を送れるよう、身元保証サービスなどを上手に活用してみてはいかがでしょうか。

これからの住まいについて考えることは、今後の生き方や、人生の最期の迎え方について考えることでもあります。快適で安全な住居を選ぶことはもちろんですが、何かあった際に頼れる先を見つけ、もしもの事態に備えておくことも重要です。

小野 聰司

記事監修者

小野税理士事務所代表の小野 聰司。
平成21年の12月に小野税理士事務所を開設し、多くのお客様のサポートをしている。