生前整理でお金の整理をしておけば老後も死後も安心
2023/02/04
日本は長寿社会となりましたが、誰もがいずれ人生の終わりを迎えます。来るべき最後に向けて、終活をする人が少なくありません。
終活を済ませておけば、残された人生を計画的に過ごせますし、死後に家族が財産を巡って争うようなことも防げるでしょう。
そこで今回の記事では、終活の中で極めて重要な作業であるお金の生前整理に注目し、どのようなことをすればいいのか解説していきます。
目 次
預貯金口座の整理をする
日本は、資産を現金あるいは預貯金で保有している人が多い傾向があります。お金の生前整理をする上で、預貯金口座の残高確認は出来るだけ早くに片付けたい作業です。
預貯金口座の残高は、通帳やネットの記録などで確認できます。しかし、通帳への記入ができていない取引履歴があるかもしれないので、ATMや窓口で記帳をしておきましょう。
残高を確認できたら、その預貯金を今後どうするのか考えます。
複数の金融機関に口座を持っている場合、そのままの状態にしておくと死後に家族が金融資産の全容を把握しにくくなります。メインバンクを決めて資金をまとめれば、家族にもわかりやすくなるでしょう。
メインバンクは、いつも利用している金融機関でも良いですし、金利等の条件が良い金融機関に乗り換えるのも一つの手です。メインバンクの口座に資金をまとめた後、それ以外の口座はそのままにしておくこともできます。
しかしながら、入出金がなければ休眠口座となってしまうので定期的に資金を動かす必要があります。そういった面倒を嫌うならば、解約してしまう方が楽です。
ネットバンクの場合、専用のアプリ、Webサイト、メールなどを用いて取引を行うので、家族も存在に気が付かない可能性があります。
ネットバンクの口座が必要であり生きている間は維持していくつもりであれば、自分の死後に家族がネットバンクの存在を把握できるようにIDやパスワード等の必要な情報を紙に印刷しておき、通帳や債権などの貴重品と一緒の場所に保管しておきましょう。
第三者に情報が漏洩しないように気をつけたいならば、鍵付きの金庫などが保管場所として最適です。
自分で口座の管理が難しいと思うときには、家族に管理を任せることもできます。しかし、金融機関は第三者による口座の利用には厳しいので、家族でもキャッシュカードを渡して暗証番号を教えて入出金を頼むことがトラブルになる可能性があります。
金融機関に家族が代理人となることを届け出て代理人カードを発行してもらい、入出金をしてもらえば安全です。その場合、疑いたくはないでしょうが家族が使い込む可能性がゼロではないので、定期的に残高を確認しておく必要があります。
口座の整理では、通帳や印鑑などの場所を決めておくことも重要です。自分にもしものことがあったとき、家族が通帳や印鑑を探す必要がないように、保管場所を教えておきましょう。
なお、訃報が金融機関に伝わると、口座凍結が行われる可能性があります。その場合でも葬儀費用を引き出すことはできますが、手続きに手間取れば家族は支払いに困るでしょう。
そこである程度の資金を生前贈与で渡しておけば、葬儀のときに家族は必要な支払いを即座にできます。
クレジットカードを整理する
クレジットカードを日々の支払いに使っている場合、お金の生前整理でやることは使わないカードの解約です。年会費がかかっているものであれば、解約するまで支払いが続きます。
家族がカードの存在に気がついていない場合、死後も契約が継続することになるでしょう。そういったトラブルは、生前に本人が解約しておくことが確実な予防策です。
カードの解約は、一般的にカード会社への電話や専用アプリやWebサイトからの申込みで手続きが完了します。近くに店舗があれば、窓口でも解約ができます。
窓口での解約は、本人確認書類などの必要書類を提出しなければいけないので事前に用意しておきましょう。解約するカードの選別をするとき、使用頻度に加えてポイントの還元率や付帯保険などが確認すべき点です。
それを踏まえて、利便性の高いカードやお得なカードを選んでおけば、日常生活で困ることはありません。
クレジットカードを解約する際、通話料金やネットショップの支払い方法として登録されていないのか、ポイントなどが残っていないのか、などの確認が必要です。
何らかの支払い方法として登録されている場合、残すカードの番号に切り替える必要があります。なお、カードをすべて解約することを考えているならば、ひとまず待った方がいいです。
カード以外の支払いに対応していないサービスもあるので、1枚は残しておきましょう。ポイントについては、買い物や商品との交換で使ってから解約をすれば問題ありません。
不動産を整理する
価値が高く権利を巡って相続人が争いやすい資産が不動産です。不動産を生前整理しておけば、死後のトラブルは起きにくくなるでしょう。
不動産の整理方法ですが、売却して代金を得る、生前贈与をする、遺言書で誰が相続するのかを明らかにしておく、駐車場などの土地活用をするといったことが考えられます。
売却や生前贈与の場合、必要となる手数料や税金を計算して、負担を抑えられる方法を考えましょう。
相続人を決めておくというのは、複数の相続人がいる場合にやっておくべきことです。相続人となる家族が集まり、話し合いで皆が納得できる結論がでてから法的効力を持つ遺言を作成します。土地活用は、運用が軌道に乗れば安定した収入源となります。
運用益は老後資金や残された家族の生活費に充てるなど使い道は様々です。しかし、土地活用は初期投資額が必要となるので、十分な蓄えがないと実行に移すのは難しいでしょう。
保険を整理する
保険については、保険商品を解約することが生前整理になります。解約する対象となるのは、保険内容に対して保険料が割高な保険や保険料が少額でも入っている意味がない保険などです。
例えば、滅多にゴルフに行かないのに加入しているゴルフ保険や、旅行に行かないのに加入している旅行保険というのは、家計に負担をかけるものでしかありません。
旅行保険のようにクレジットカードの付帯保険で代替できるものならば、なおさら不要と言えます。不要な保険を解約していけば、無駄な出費を減らせるでしょう。
また、必要な保険を残した後、誰がどのような場面でいくらの保険金をもらえるのかを確認しておくことも重要です。貯蓄性のある保険の場合、満期まで契約するのか、途中で解約して返戻金をもらうほうが良いのかということも検討しておきましょう。
確認すべきことを確認したら、保険証券の保管場所とともに保険金請求の方法などを家族に教えておくことで保険を必要なときに活用できます。
有価証券を整理する
株式や債券などの有価証券は、価値があるものですが算定に手間がかかるもので相続で揉める原因になりやすいです。家族に迷惑をかけたくないのであれば、売却して現金化してしまうことがシンプルな解決方法です。
運用益を得るために残したいときには、証券会社に作成してもらった運用報告書をまとめて、保有している有価証券を把握しやすくしておきましょう。
借金を整理する
借金など負の財産があるときには、その相手や金額を確認して書面にしておきましょう。正確な借入情報を知りたいときには、個人信用情報機関に本人開示手続きをすることで、契約の内容や返済状況などを確認できます。
借金が残っており、預貯金や不動産の売却などで完済できるのであれば、返済負担をこれ以上増やさないためにも早めに手続きを済ませましょう。
もし、借金が返せそうもないときには、話し合いで家族が借金ごと相続をするのか、それとも相続放棄をするのかを決めておきます。
お金の生前整理は後回しにしない
残りの人生や仕事のことを考えるのは憂鬱でしょうが、お金の生前整理をしておかなければ無駄な出費をすることになりますし、家族に迷惑をかけます。嫌なことでも後回しにせず、早めに片付けてしまうのが賢明です。
場合によっては、難しいお金の計算や複雑な手続きで悩むこともあるかもしれませんが、そうしたときには金融機関や保険会社などの担当者に相談をして解決しましょう。
記事監修者
小野税理士事務所代表の小野 聰司。
平成21年の12月に小野税理士事務所を開設し、多くのお客様のサポートをしている。