介護タクシーは介護保険適用になる?適応条件や料金にくわえ福祉タクシーとの違いを解説

2024/04/10

介護タクシーとは、介護が必要な方やそのご家族が移動手段として利用を検討されるタクシーです。しかし、介護タクシーの利用は介護保険でカバーされるのか、どのような条件で利用が可能なのか、といった疑問をお持ちの方も少なくないでしょう。

また、似たサービスである「福祉タクシー」との違いについても明確ではないかもしれません。今回は、介護タクシーが介護保険の適用対象となる条件、必要な手続き、実際の料金体系、そして福祉タクシーとの具体的な違いについて詳しく解説します。

この記事で分かること

・介護タクシーの仕組みや利用料金

・介護タクシーの介護保険適用について

・介護タクシーと福祉タクシーとの違い

・介護タクシーのメリット・デメリットと注意点

介護タクシーとは?

介護タクシーは、高齢者や障害者など移動に困難を抱える人々が安全に移動するための特別なサービスを提供するタクシーです。ただ、「介護タクシー」という名称のサービスが存在するというわけではなく、あくまで介助者が必要な方が利用するタクシーサービスを総称したものとなります。

介護タクシーは通常のタクシーサービスと異なり、利用者の身体的なサポートも提供し、必要に応じて車椅子のまま乗車できるような設備が整っています。日常的な移動のサポートから、病院への通院、レクリエーション活動への参加など、多岐にわたる用途で利用されています。

介護タクシーの車両は、乗り降りしやすいように低床型であることが多く、車椅子をそのまま乗せることができるリフトやスロープが装備されていることが一般的です。運転手は介護の基礎知識を有しており、利用者が車内で安全に快適に過ごせるようサポートします。また、運転手は介護に関する研修を受けていることが多く、利用者の体調や状況に合わせた適切な対応が可能です。

介護タクシーに介護保険は適用される?

介護タクシーに介護保険が適用されるかどうかは、サービスの提供形態や利用者の条件によって異なります。

日本の介護保険制度は、主に65歳以上の高齢者や特定の疾患を持つ40歳以上の人々を対象としており、要支援・要介護認定を受けた人々に対して、さまざまな介護サービスを提供するための財政的支援を行っているのです。

介護保険でカバーされるサービスは、主に介護保険法に基づいて定められたものとなります。これには、居宅介護、短期入所生活介護(ショートステイ)、訪問介護、特定施設入所支援、福祉用具の貸与などが含まれます。

そのため、厳密には、移動支援として介護タクシーが直接的に介護保険のサービスとして認められているわけではありませんが、介護サービスの一環として利用する場合、間接的に保険の適用が考えられる場合があるのです。

介護保険適用条件は、主に以下2つ。

・要介護1以上の認定を受けている

・ケアプランに「乗降介助・身体介護が必要」と記載されている

これらの条件を満たせば、介護保険が適用され、自己負担額は利用者の介護度によって軽減されます。

介護保険でカバーされない部分については、利用者の自己負担となりますが、自治体によっては高齢者や障害者の移動支援を目的とした独自の補助制度を設けている場合があります。これにより、介護タクシーの利用料金の一部が補助されることもあります。

介護保険対象外になるケースとは?

介護タクシーが介護保険の対象外となるケースには、いくつかの典型的な事例があるので、事前に確認が必要です。基本的には、介護タクシーの利用が直接的な介護サービス提供の一環として認められない場合、介護保険の適用外となります。

・旅行や観光

・趣味の活動

・友人宅への訪問

・冠婚葬祭への参列

・その他、日常生活上または社会生活上必要な行為に該当しない利用

これらの目的での利用は、全額自己負担となります。具体的には、以下のようなケースが保険適応外になると考えられます。

■例1:要介護認定を受けていない方が利用する場合

70歳以上の方で、要介護認定を受けていない方が、介護タクシーを利用して買い物に出かける場合、介護保険は適用されません。全額自己負担となります。

■例2:ケアプランに「乗降介助・身体介護が必要」と記載されていない場合

要介護2の方が、ケアプランに「乗降介助・身体介護が必要」と記載されていない状態で、介護タクシーを利用して通院する場合、介護保険は適用されません。全額自己負担となります。

■例3:買い物に出かける場合

要介護3の方が、介護タクシーを利用して買い物に出かける場合、介護保険は適用されません。全額自己負担となります。

■例4:家族が付き添える場合

要介護4の方が、家族が付き添える状態で、介護タクシーを利用して通院する場合、介護保険は適用されません。全額自己負担となります。

■例5:福祉タクシーを利用する場合

要介護5の方が、福祉タクシーを利用して通院する場合、介護保険は適用されません。全額自己負担となります。

※介護タクシーと福祉タクシーの違いについては、後述いたします。

介護タクシーは、介護保険が適用される場合とそうでない場合があります。利用前に、介護保険担当者に相談し、自己負担額を確認することが大切です。

介護タクシーの仕組みについて

介護タクシーの利用を希望する場合、事前に予約が必要です。予約時には利用者の健康状態や移動の目的、特別な配慮が必要かどうかを運送業者に伝えることが重要です。料金は通常のタクシーよりも高めに設定されていることが多いですが、その理由は特別な設備の維持と、運転手の特別なスキルに対する対価として設定されています。

介護タクシーの利用方法

介護タクシーを利用するには、以下の手順が必要です。

1.介護保険担当者に相談

要介護1以上の認定を受けている方は、まず介護保険担当者に相談する必要があります。ケアプランに「乗降介助・身体介護が必要」と記載してもらうことが必要です。

2.介護タクシー事業者を選ぶ

介護保険担当者から紹介を受けたり、インターネットなどで情報収集したりして、介護タクシー事業者を選びます。

3.利用を申し込む

希望の日時と利用場所を伝え、利用を申し込みます。

4.当日の利用

当日、介護タクシーに乗車し、目的地まで移動します。

介護タクシー利用の流れ

1.利用前

・介護保険担当者に相談し、ケアプランに「乗降介助・身体介護が必要」と記載してもらう

・介護タクシー事業者を選ぶ

・利用を申し込む

2.当日

・介護タクシーに乗車

・乗務員が乗降介助を行う

・必要に応じて、車内で介護を行う

・目的地まで移動

3.利用後

・料金を支払う

介護タクシーの利用料金の目安

介護タクシーの基本料金は通常のタクシーよりも高めに設定されていることが多いです。初乗り料金(最初の一定距離または時間)が設定されており、それを超えると距離または時間に応じて追加料金が発生します。

介護タクシーの料金は、主に以下の2種類で構成されています。

■訪問介護単価

介護保険で定められた介護サービスの単価です。介護度や利用時間によって異なります。(例:10分あたり440円)

■車両運賃

タクシー会社の定める運賃です。利用地域や距離によって異なります。(例:初乗り料金730円、1kmあたり267円)

訪問介護単価の目安は、利用者の介護度や利用時間によって異なりますが、以下のような設定になっていることが一般的です。

・介護度1:10分あたり220円~330円

・介護度2:10分あたり330円~440円

・介護度3:10分あたり440円~550円

・介護度4:10分あたり550円~660円

・介護度5:10分あたり660円~770円

また、車両運賃は、利用地域やタクシー会社によって異なります。

介護保険が適用される場合の自己負担額

介護保険が適用される場合の自己負担額は、利用者の介護度によって異なります。

・介護度1:利用料金の3割

・介護度2:利用料金の2割

・介護度3:利用料金の1割

・介護度4:利用料金の1割

・介護度5:利用料金の1割

具体的な利用料金の例

■例1:要介護2の方が、1時間利用する場合

・訪問介護単価:440円/10分 × 60分 = 26,400円

・車両運賃:初乗り料金730円 + (2km-2km) × 267円 = 730円

・合計:27,130円

■例2:要介護3の方が、30分利用する場合

・訪問介護単価:500円/10分 × 30分 = 15,000円

・車両運賃:初乗り料金730円 + (2km-2km) × 267円 = 730円

・合計:15,730円

■要介護2の方が、1時間利用した場合の自己負担額の例

・利用料金:27,130円

・自己負担額:27,130円 × 20% = 5,426円

また補足として、すでにお伝えしているように、介護保険が適用されない場合は全額自己負担となります。

料金は、利用地域やタクシー会社によって異なりますが、一般的には介護保険が適用される場合よりも高額になります。

具体的には、介護保険が適用されない場合、1時間の利用で5,000円~10,000円程度かかることが多いようです。

介護タクシーと福祉タクシーとの違い

介護タクシーと福祉タクシーは、どちらも高齢者や障がい者向けの送迎サービスですが、利用できる方や料金、サービス内容などに違いがあります。

介護タクシーは、高齢者や障害者など、特定の介護が必要な個人が安全に移動するために設計されたサービスです。

詳細はこれまでお伝えしておりますが、改めて、介護タクシーの定義は以下。

・介護保険法に基づく「訪問介護サービス」の一種

・要介護1以上の認定を受けた方が利用できる

・乗降介助や歩行介助などの介護を行う

・介護保険が適用される場合がある

一方、福祉タクシーもまた、高齢者や障害者の移動支援を目的としていますが、介護タクシーとは根本的に異なる要件があります。

福祉タクシーの具体的な特徴として、車椅子対応の設備を備えていますが、介護タクシーほど高度な装備は必要としないことが挙げられます。

また、福祉タクシーは、高齢者や障害者だけでなく、一時的な怪我をした人など、広範囲の利用者にサービスを提供します。さらに、主に医療機関への通院支援が主な目的であり、介護タクシーほど広範なサービスは提供されない場合が多いです。

福祉タクシーの定義を端的にまとめると、以下のようになります。

・介護保険の対象ではない方が利用できる送迎サービス

・介護タクシーと異なり、介護福祉士などの資格は不要

・介助が必要な場合は、家族などの付き添いが必要

・全額自己負担となる

さらに、福祉タクシーは、介護タクシーよりも車両数が多い傾向があります。

それぞれのタクシーを利用した場合、料金は以下のようになるでしょう。

■1時間のタクシー利用例

・要介護2の方が、介護タクシーで1時間利用した場合:自己負担額は約5,280円

・福祉タクシーで1時間利用した場合:全額自己負担で約8,000円

自分に合ったサービスを選ぶために、それぞれの違いを理解しておきましょう。

介護タクシーのメリットとデメリット

介護タクシーは、高齢者や障がい者にとって、なくてはならない移動手段の一つです。しかし、メリットとデメリットを理解した上で利用することが大切です。

この項目では、介護タクシーのメリットとデメリットについて、それぞれ詳しく解説します。

介護タクシーのメリット

■安全・安心な移動

介護タクシーは、介護の知識と技能を持つ乗務員が乗車するため、安全・安心に移動することができます。

・乗降介助や歩行介助などの介助を丁寧に行ってくれます。

・車内には、車椅子用のスロープや手すりなどが備えられていることが多いです。

・緊急時に適切な対応をしてくれます。

■自身の負担軽減

介護タクシーを利用することで、家族や介護者の身体的、心理的、経済的負担を軽減することができます。

・送迎の付き添いが不要になります。

・介助の負担を減らすことができます。

・心理的な負担を軽減することができます。

・自己負担額は介護度によって異なりますが、全額自己負担となる福祉タクシーに比べて安くなります。

■外出の機会の増加

介護タクシーを利用することで、外出の機会を増やすことができます。

・通院や買い物など、必要な場所に移動することができます。

・レジャーや趣味の活動に参加することができます。

・社会とのつながりを維持することができます。

■専門知識や経験に基づいたサポート

介護タクシーの乗務員は、介護に関する専門知識や経験を持っています。

・介護に関する相談に乗ることができます。

・適切な介護方法をアドバイスすることができます。

・地域の福祉情報などを提供することができます。

■その他のメリット

・事前に予約できるので、時間に余裕を持って利用することができます。

・車内は清潔で快適な空間になっています。

・ペット同伴可能な車両もあります。

介護タクシーのデメリット

■利用できる地域が限られている

すべての地域で介護タクシー事業者が存在するわけではありません。

・利用できる地域が限られているため、希望の時間に利用できない場合があります。

・事前に利用可能地域を確認する必要があります

■予約が必要

事前に予約が必要となるため、急な利用には対応できない場合があります。

・計画的に利用する必要があります。

・急な利用の場合は、福祉タクシーや家族の送迎などを検討する必要があります。

・需要が高い時間帯や日には予約が集中しやすく、希望する日時にサービスを利用できない場合があります。

■キャンセル料が発生する場合がある

利用をキャンセルした場合、キャンセル料が発生する場合があります。

・キャンセルポリシーを確認する必要があります。

・どうしてもキャンセルする場合は、早めに連絡する必要があります。

■料金が高い

介護保険適用の範囲や状況によっては、福祉タクシーに比べて料金が高い場合があります。

・介護保険が適用される場合でも、自己負担額が発生します。

・利用頻度が多い場合は、費用が負担になる可能性があります。

■その他のデメリット

・介助内容によっては、利用できない場合があります。

・複数の利用者をまとめて送迎する場合、乗車時間が長くなる場合があります。

・待ち時間が発生したり、希望する時間に利用できなかったりするケースもあります。

介護タクシーを利用する際の注意点

介護タクシーを利用する際には、以下のような点に注意を払うことが重要です。

・利用できるかどうかの事前確認を行う

・事前に利用に必要な情報まとめておく

・介護保険の適用状況を確認しておく

・介護度と利用内容を確認しておく

以下で、それぞれ詳しく解説いたします。

利用できるかどうかの事前確認を行う

お伝えしてきたとおり、介護タクシーは要介護1以上の認定を受けている方のみ利用できます。ケアプランに「乗降介助・身体介護が必要」と記載されている必要があることを、事前に確認するようにしましょう。

利用に必要な情報まとめておく

介護タクシーは、事前に情報を事業者へ伝える必要があります。

具体的には、氏名、住所、電話番号、介護度、利用目的、利用時間、利用場所などを伝えましょう。介助が必要な場合は介助の内容も伝え、同行者がいる場合は同行者の氏名も伝えるようにしてください。

介護保険の適用状況を確認しておく

介護保険を利用するには、まず市区町村の介護保険担当者に申請し、要介護認定を受ける必要があります。

介護保険適用状況を確認するには、介護保険証やケアプランを確認する方法にくわえ、介護保険担当者に相談するという方法があります。

介護保険証には、要介護度や有効期限などが記載されています。また、ケアプランには、「乗降介助・身体介護が必要」と記載されているかどうかが確認可能です。

さらに、介護保険担当者に相談すれば、介護保険適用状況について詳しく教えてもらえます。

介護保険が適用される場合とそうでない場合では、自己負担額が大きく異なります。介護保険が適用される場合、利用できるサービスの種類や範囲が広がるうえ、利用料金に関するトラブルを防止できます。

介護度と利用内容を確認しておく

利用者がどの介護認定レベルに該当するかを確認してください。介護認定は、要支援1から要介護5までのレベルがあり、これによって必要とされるサポートの程度が異なります。

・介護度1:利用できる頻度が限られており、自己負担額も高額になる場合があります。

・介護度2:比較的利用しやすいですが、自己負担額は発生します。

・介護度3:利用できる頻度が高くなりますが、自己負担額は高額になる場合があります。

・介護度4:比較的利用しやすいですが、自己負担額は高額になる場合があります。

・介護度5:利用できる頻度が高くなりますが、自己負担額は高額になる場合があります。

また、介護度によって、介護保険で利用できる時間数も異なります。

・介護度1: 1ヶ月あたり18時間

・介護度2: 1ヶ月あたり36時間

・介護度3: 1ヶ月あたり54時間

・介護度4: 1ヶ月あたり72時間

・介護度5: 1ヶ月あたり90時間

介護タクシーを利用する際には、必ず介護度と利用内容を確認しておきましょう。介護度や利用内容に合ったサービスを利用することで、より安全・安心に利用することができます。

まとめ

介護タクシーの利用に関する介護保険の適用は限定的ですが、適切な条件下では部分的な支援が可能です。主に、ケアプランに基づく医療や介護サービスへの移動であれば、介護保険を通じての支援を受けることがあります。事業者選びやサービスの詳細確認は、効果的な利用のために重要です。また、福祉タクシーと比較して、介護タクシーはより専門的な介護ニーズに対応し、装備や運転手の資格にも特化しています。福祉タクシーは主に通院のサポートに特化している点が異なります。

また介護タクシーには多くのメリットがある一方で、デメリットもあります。介護タクシーを利用するかどうか検討する際には、自身の状況やニーズに合わせて、メリットとデメリットを比較検討することが重要です。

小野 聰司

記事監修者

小野税理士事務所代表の小野 聰司。
平成21年の12月に小野税理士事務所を開設し、多くのお客様のサポートをしている。